厚生労働省は7月21日、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(商品名シルガード)を承認しました。従来承認されていた2価ワクチン(商品名サーバリックス、16、18型が対象)、4価ワクチン(商品名ガーダシル、6、11、16、18型が対象)と異なり、9価(6、11、16、18、31、33、45、52、58型が対象)です。
シルガードの添付文書および審査報告書に書かれていた、メインの臨床試験である国際共同フェーズⅡ/Ⅲ試験(001試験)の概要は以下です。パートAとパートBに分かれています。
パートA:同じ9価でも用量の異なるL剤、M剤、H剤と対照群として4価のガーダシルの計4群を比較するランダム化比較試験(RCT)。M剤のガーダシルに対する非劣性を確認
パートB:M剤とガーダシルを比較するRCT。共通の4型については、M剤のガーダシルに対する非劣性を検証。追加された5型については、追加の5型に関連する子宮頸部、外陰および腟の疾患発生例数の合計から、M剤のガーダシルに対する優越性を検証
パートBの結果は以下です。
(共通の4型)共通の4型に関連した疾患イベント(CIN1/2/3、AIS、VIN1/2/3、VaIN1/2/3、尖圭コンジローマ)は、M剤群5883例中6例、ガーダシル群5898例中7例で同程度だった
(追加の5型)追加の5型に関連した疾患イベント(CIN2/3、AIS、子宮頸癌、VIN2/3、VaIN2/3、外陰癌、腟癌)は、M剤群6016例中1例、ガーダシル群6017例中30例で、ガーダシル群で優れていた
安全性についても詳しく検討されているので、改めてまとめたいと思います。
なお承認に関連して、厚労省は課長通知(厚労省2020年7月21日)で、製造販売後調査や安全性監視(ファーマコビジランス)活動への協力を依頼すると同時に、接種時の注意事項(皮下注ではなく筋注であること)について医療機関や医師に注意喚起しました。注射部位の誤りは、国内でのHPVワクチンでの報告(Vaccine 2012; 31: 27-30.)や海外からの報告(J Am Board Fam Med. 2012; 25: 919-22.、Can Fam Physician 2019; 65: 40-2.等)があります。