昨日のZoom勉強会(メディアドクター研究会第68回定例会)で、俳優の石田純一さんが新型コロナウイルスに感染したことを報じた記事(サンスポ2020年4月22日くすり×リテラシー2020年4月21日)を題材にしたら、見出しで使われていた引用符(“”)の話になりました。見出しの「効果を“立証”」は、立証を強調しているのか、それとも逆に、立証されたか実は疑わしいのか、読者によって受け取り方が違っていたのです。マスコミ業界では、あえて引用符(“”)を付けるのは後者の意味だと考えられていますが、そう受け取っていなかった人もいました。

 

 Wikipediaに皮肉の引用符(scare quotes)という項目があり、「著者が他の誰かの用語を使用して、その表現の前に「いわゆる」(so-called)というフレーズを置くのと同等の意味合いを示したり、その表現に対する懐疑や意見の不一致、または、その言葉を誤用している、あるいは元の表現の作者が引用符で囲まれた言葉とは反対の意味を意図しているということを暗示する場合もある」と説明されていました。英語で(近頃は日本語でも)、両手の指で引用符の形を作って単語を話す(これをエアクオート(air quote)という)ときは、ほぼ「皮肉の引用符」です。

 

 「効果を“立証”」を、文字通り「立証」と受け取るか、「(本当は違うけれど)いわゆる立証」と受け取るかでは、意味が全然違います。何気なく使っている引用符一つとってもこうなのですから、書き手が伝えたいことを読者に正確に伝えるのは難しいと改めて思います。