女王様たちは、二人の小人にこれまでの事を話しました。
「そうだったのか。私は操られて魔女の手下になってしまっていたのか」
シャープは操られていた時の記憶がないようで、ファットが、
「そうなんだ。魔女に操られて、魔女に命じられるがままに私たちは動いていたんだ。心のどこかで抵抗しようと頑張ってみていたけれど、私の意思とは別に体が動いていたんだ」
と言うまでなかなか納得しませんでした。
「分かっていただけましたか?」
女王様が二人に言うと、小人たちは黙って首を縦にふりました。
「それなら、紐をほどくわね」
リンが小人の手足に固く結ばれている紐を力一杯引っ張りました。
けれど、女王様がきつく結んでしまったので、びくともしません。
「ごめんなさい。私がほどきます」
女王様はそれを見て、慌てて紐をほどきました。
「さぁ、これで大丈夫です。致し方のないこととはいえ、縛り上げてしまってごめんなさい」
すっかり紐がはずれると、女王様は小人たちに謝りました。
「なぁに、呪いで縛られるよりましってものだよ」
ファットはそう言って、大きなお腹を揺らしながら笑いました。
「まだちょっと痛いなぁ」
その横でシャープがぶつくさと言っています。
「ところで、お聞きしたいのですが、魔女はドラゴン水晶を奪っていったということですが、それはどのようなものなのですか?」
女王様は二人の側に座りこんで、尋ねました。
リンとヒューンもその横に座り、答えを待ちました。
「あれは、とても大事なものなんだ」
シャープが腕をさすりながら言いました。
ファットも、
「あなた達と関係がないわけではなさそうです。長くなってしまいますが、お話ししましょう」
と言って、口を開きました。
「私たちの祖先は、この地をすみかとしていたブラックドラゴンに怯えて暮らしていました。ブラックドラゴンは小人たちに毎日山ほどの野菜や魚を運ばせ、足りなければ小人を食べてしまうという恐ろしいドラゴンでした。小人たちは何百年もの間、ブラックドラゴンに食べ物を届けました。その間にブラックドラゴンのエサとなってしまった小人は数えきれないほどでした。そこで、小人達は小人族に伝わる悪を閉じ込めると言われていた水晶に、どうにかしてブラックドラゴンを封印することが出来ないものかと考えました。けれど、水晶に悪を閉じ込める力があるといっても、どうやって使うものなのかは誰も知りませんでした。小人たちは毎日水晶を眺め、触り、水につけたり太陽の光を浴びせたりと様々な事をしました。けれど、水晶はただの水晶のままでした。そんなある日、日照りが続き作物が枯れはて、食べるものがなくなりました。もちろんブラックドラゴンへ渡すための食べ物もありません。大勢の小人達が犠牲となることは目に見えていました。小人たちはその時初めて田畑を耕す道具を持ち、ブラックドラゴンと戦うことにしたのです。お腹を空かせたブラックドラゴンは小人達の村に襲いかかりました。小人たちは必死に戦いました。けれど、ブラックドラゴンの固い皮膚はどんな攻撃も跳ね返し、口から真っ赤な炎を吐いて小人達を黒こげにしてしまいました。ブラックドラゴンの前になすすべもなく一人倒れ、二人倒れ、ブラックドラゴンの足元には大勢の小人が無惨な姿となって死んでいきました。女や子供たちが隠れている洞窟までもがブラックドラゴンに襲われようといていたその時、奇跡が起きたのです。天から白い光が矢のように降り注ぎ、洞窟の中へと突き刺さりました。そして、洞窟の中心にまつられていた水晶の中に吸い込まれていきました。光を全て吸い込んだ水晶は、天使のように音もなく浮かび上がると、洞窟を飛び出し、まるで意志があるかのように光を放ちながらブラックドラゴンの回りをグルグルと回り始めました。そして、ブラックドラゴンがすっかり光に包まれ、水晶もブラックドラゴンの姿も見えなくなりそこには光の柱だけとなりました。その巨大な光の柱はそれから一月もの間、朝も夜も光り続けました。そしてある朝、力尽きたように光が消え、そこには黒い星を閉じ込めた水晶が地面に突き刺さっていたのです。それからブラックドラゴンは姿を消し、水晶はドラゴン水晶と呼ばれ、ブラックドラゴンを封印した水晶として私たち小人か大切に受け継いできたのです」
ファットが話を終えると、リンとヒューンの目には涙が浮かんでいました。
「ブラックドラゴンって、なんてひどいやつなの。小人さん達かわいそう」
と、リン。
「かわいそうすぎます」
と、ヒューン。
二人は手と羽を取り合っておいおいと泣き始めました。
「そんなことがあったのですか。大変だったのですね」
女王様もそっと目尻をぬぐいました。
「さっき、あなたの話の中に、ドラゴンの話が出てきたでしょう?魔女のペットだという」
ファットが王女様に聞きました。
「はい。魔女はドラゴンをペットとして飼っていて、私の国の人々を食べるつもりだと言っていました」
「ドラゴン水晶の中に閉じ込められていたブラックドラゴンが、魔女の手によって再び姿を現したに違いない!」
ファットはそう言うと、青ざめました。
シャープも横で顔を青くしています。
「水晶を取り戻すしかない」
ファットはブルッと身震いすると、強い口調で言いました。
「ドラゴンは魔女を倒すためにもどうにかしなければなりません。ここは力を合わせましょう!」
女王様はファットとシャープの目を見て力強く言いました。