「こちらがヒューンです」
女王様がうやうやしくヒューンを紹介すると、
「私はヒューンです。はじめまして」
と、ヒューンは優しくリンに話しかけました。
「はじめまして、私はリンです」
リンもちょこんと頭を下げて挨拶すると、にっこりと微笑みました。
「ヒューンがいい知らせを運んできてくれたのですよ」
女王様がにこにこしながら先程聞いたヒューンの話をリンに話して聞かせると、リンも王様の無事を喜びました。
「けれど、青白い光を放つ小人のことは気になるわ。そんな小人これまで見たことがないのだけれど。もしかして…」
「何か心当たりがあるのですか?」
じっと黙りこんでしまったリンに、女王様が聞きました。
「もしかしたら、だけど、この島には私たち妖精と同じように、畑で野菜を作る小人たちがいたの。けれど、最悪の魔女が来てしばらくしてから、小人たちの姿を見なくなってしまったの。もしかしたらその小人たちが最悪の魔女の魔法で手下に変えられているのかもしれないわ」
「そうだとしたら、小人たちは本当の敵ではないかもしれないということですね」
女王様がそう言うと、ヒューンも、
「そういうことになりますね。なんとか小人たちとは争わないようにしなければなりませんね」
と言って難しそうな顔をしました。
「とにかく、最悪の魔女を倒せば悪い魔法は解けるはずよ。それから敵かどうかは見ればいいわ」
リンがそう言うと、ヒューンは、
「それがいい」
と言って、うなずきました。
「けれど、どうやって小人やカラスたちに見つからないようにして最悪の魔女だけを倒せばよいのでしょう?それに、ドラゴンもいるのでしたね」
と、女王様が言うと、リンもヒューンもまた黙りこんでしまいました。
「一度、私の部屋でご飯でも食べながら考えましょう」
リンが言うと、女王様はなんだかお腹が空いてきてしまいました。
「そうですね。やみくもに戦いを挑んでも勝てる相手ではなさそうです。何かいい作戦を考えなくては」
女王様が言うが早いか、
「じゃあ、先に行って温かい野菜スープを作っておくわ。ゆっくりでいいから私の部屋に来て」
と言って、リンは返事も聞かずに吸い込まれるようにして穴の中に入っていってしまいました。
「では、ヒューン、一緒に行きましょうか。私の後に着いてきてください」
女王様は穴に向かうと、ヒューンを振り返りました。
ヒューンはパタパタと羽音を立てて女王様の背中を追いました。
女王様は穴に体をねじ込むと、再び狭い道を這うようにして進み、ヒューンがその後ろから羽をたたんでトコトコと着いて行きました。
「あら?さっきよりも体が軽くなった気がするわ」
女王様は来たときよりも楽に進めることに気がつきました。
それに、少しも息が切れません。
「女王様はちょっと前より顔色もよくなって、少し細くなった気がしますね」
ヒューンが言うと、女王様は、
「そうかしら」
と言って、首をかしげました。
ようやくリンの部屋へとたどり着くと、リンの部屋にはすでに白い湯気が立ち上る鍋と小さな木の器が二つ机の上に置かれていました。
「カボチャと玉ねぎとにんじんのスープよ。どうぞ召し上がれ」
リンは小さな器にスープを入れると、ヒューンの前と自分の前に置きました。
「女王様は、これでどうぞ」
リンは体より大きな鍋をよいしょと女王様の前に置きました。
「まぁ、ありがとう」
女王様は手を合わせて喜びました。
女王様からすると、ちょうどおわんほどの大きさでした。
「なんていい匂い。太陽の匂いがしますね」
ヒューンは置かれた皿を両方の翼で抱え、思い切り匂いをかぎました。
そして、
「いただきます!」
と言うと、よほどお腹が空いていたのか、ずずっと皿を傾け、一口で飲み干してしまいました。
「あぁ、生き返った気分です!」
口についたスープを翼でふきながら、ヒューンは満足そうに言いました。
「よろしければ、おかわりを頂けませんか?」
女王様とリンはあっけにとられてヒューンを見ていましたが、すぐに「どうぞ」と言って、女王様が自分の鍋を傾けてヒューンが飲み干した皿にスープを注ぎました。
「よほどお腹が空いていたのですね」
女王様が微笑みながら言うと、
「それもありますが、このスープ、なんとも美味しくて体も心も暖まります」
と、言ってヒューンはまた一口でスープを飲み干してしまいました。。
「良かったわ」
リンもそれを微笑ましそうに見つめました。
「本当に美味しいわ」
女王様もスープを一口食べると、そう言ってぐいっと鍋を傾けました。
体の中でまきが燃えるようにぐんぐんと暖まり、身体中に力がわいてきます。
「いいことを思い付いたわ」
女王様は、スープを飲んでしまうと、急にいい考えが浮かび上がりました。
「こういう作戦はどうでしょうか?」
女王様とヒューン、リンは内緒話をするかのように頭を近づけて、女王様の話に耳を傾けました。