お菓子の国の女王様⑧ | 島村寺子屋まなび塾&ハポス治療院  公式ブログ

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国家資格の柔道整復師であり、心とからだのセラピスト歴28年のハポス田島があなたのつらい痛みを一緒に治して行きます。

あなたのその繰り返す痛みと辛さは???
自分自身に向き合う方法を、一緒に考えて行きましょう。

「大丈夫?」
リンは後ろを振り返り、女王様に言いました。
女王様は今は鎧を脱ぎ、槍もリンの家に置き、身軽になっていました。
けれど、体は太く、地上に出るまでの間に妖精たちが通る道をはって通ってきた女王様の息は荒く、苦しそうでした。
「だ、大丈夫です」
女王様は何とか声を振り絞ると、ゆっくりと立ち上がりました。
妖精たちの住みかにいた時は立ち上がることが出来なかった女王様は、うーんと大きく伸びをして息を大きく吸い込みました。
「休んでいる暇はありません。すぐにヒューンを探しましょう」
女王様は息を落ち着かせると、リンに言いました。
野菜を食べてから、女王様の体には力がみなぎり、頭もスッキリとしていました。
まるで甘いお菓子の呪いから解き放たれたようでした。
「それじゃあ、さっそく笛を吹いてみるわね」
リンはそう言うと、首にかけていた笛を口につけ、思い切りフゥーと息を吹きました。
「ピロピロピロー」
笛からは小鳥の鳴き声のような高くて可愛らしい音が鳴りました。
「ピロピロピロリー」
リンは吹いては休み、吹いては休みを繰り返しました。
「ヒューンさんにここにお菓子の国の女王様がいるから来てって言ってみたわ」
リンはにっこりと笑って言いました。
「その笛は鳥の言葉を話せるのですか?」
女王様は不思議に思って聞きました。
「そうよ。音の長さを変えることで鳥の言葉になっているの。ちょっと難しいから妖精の中でもこの笛を使える子はそんなにいないんだから」
リンは得意気にそう言うと、えへんと胸をそらしました。
そんなリンの可愛らしい姿を見て、女王様はフフと微笑みました。
そして、黒い空を見上げ、ヒューンが来るのを待ちました。
黒い森の中はひんやりとしていて、今にも闇が女王様とリンを捕まえようとしているようでした。
「寒くはありませんか?」
女王様はまだラム酒が体に残っているらしく、寒さはあまり感じませんでしたが、リンを見ると寒そうに体を震わせています。
「少し寒いわ」
リンは両手で体を包むようにして、体を暖めようとしました。
「私の服の中に入っていてください」
女王様はそう言って小さなリンの体をひょいと両手で優しく包み込むと、だぼっとした服の中に押し込みました。
女王様の胸元から顔だけ出したリンは、恥ずかしそうに、
「ありがとう。とっても暖かいわ」
と言いました。
「それは良かったです」
女王様は冷たくなったリンの体を
服の上から両手で暖めました。
二人はそうやってしばらくの間、じっと空を見上げていました。
「来ませんね」
少しずつ体が冷たくなり始め、女王様は残念そうな声をあげました。
「来ないわね。ヒューンさんはもうこの島にいないか、闇にやられてしまったかに違いないわ」
「とても残念だけれど」
リンも沈んだ顔で言いました。
「ラム酒を飲まずにあまり長く地上にいるのは危険だわ。部屋に戻りましょう」
「わかりました。そうしましょう」
リンの言葉に女王様はしぶしぶ返事を返しました。
リンは女王様の服から飛び出すと、木の葉で覆い隠された妖精の住みかへと続く穴へと吸い込まれるように入っていきました。
女王様も小さな穴の中に足を入れて体をすぼめようとした時でした。
「女王様」
暗闇から小さく女王様を呼ぶ声が聞こえました。
「女王様。私です。ヒューンです」
女王様はその声を聞いて穴から体を引き抜くと、辺りを見回しました。
「ヒューン?ヒューンなのですか?どこにいるのですか?」
女王様は必死になって叫びました。
「しっ、静かに。さっき一緒にいた妖精は味方なのですか?」
ヒューンの声は緊張していました。
「そうです。私と共に魔女を倒しにいってくれるのです」
女王様がそう言うと、しばらくの沈黙のあと、バサバサと音がして、女王様の前に白いヒューンの体が現れました。
「あぁ、無事だったのですね」
女王様は喜びに涙を浮かべ、ヒューンの体を抱き締めました。
ヒューンの体は少しだけひんやりとしていました。
「家族にあげるはずだったクッキーを食べて、なんとかなりました。けれど、暗すぎて女王様を見つけることが出来なくなってずっと探していたら私を呼ぶ声がして来てみたのです」
「そうだったのですね。あぁ、でも本当に良かった」
女王様はそう言ってヒューンの体を離すと、じっとその姿を見ました。
ヒューンは口をまっすぐに結び、しかめつらをしています。
「どうしたのですか?」
女王様が心配になって聞くと、
「実は、女王様と離れていたときに、青白く輝く小人たちを見つけたのです。そのものたちは最悪の魔女の手下のようで、最悪の魔女の命令で島の外れまで魚を取りに来ているようでした。なんでも捕まえた男がどんどん痩せていってしまって太らせなければならないと言ってました。太るまでは最悪の魔女が魔法を使うことが出来ないと」
女王様はそれを聞いて、はっとしました。
間違いなく王様の事です。
「王様もまだ無事なのですね」
乾いた涙がまた女王様の目に浮かびました。
「男とはやはり王様のことなのですね。無事が分かって良かったです。けれど、まだ油断は出来ません。王様がまた太ってしまえば最悪の魔女は魔法を使うつもりです。急いで助けに行きましょう」
「分かったわ。リンも呼んできます」
女王様は穴に向かって体の向きを変えました。
「本当に味方なのですか?最悪の魔女の手下ではないのですか?」
すると、ヒューンが冷たい声で言いました。
女王様はヒューンを振り向き、これまでのリンの話を思い出しました。
太陽のような暖かい光を持ったリンが魔女の手下だとはどうしても考えられませんでした。
「違います。私が保証します。あの妖精は私たちの味方です」
女王様ははっきりと言いました。
ヒューンはしばらく女王様の顔をじっと見ていましたが、その自信に溢れた表情を見て、にっと笑顔を見せました。
「分かりました。女王様を信じましょう。後ろにいるリンさんに私を紹介していただけますか?」
女王様がその言葉に振り向くと、リンがフワフワと飛び、こちらを不思議そうに見ていました。