女王様とヒューンを乗せた船は、しばらくして黒い森にたどり着きました。
「それでは、まいりましょう」
女王様は槍を握りしめ、反対の手で食料が入った袋をかつぎ、足を踏み出しました。
ヒューンはフワリと羽をはばたかせ、先に森へと入りました。
女王様もやっとこ地面に足を下ろすと、バランスを崩して土の上に倒れこんでしまいました。
「大丈夫ですか?」
ヒューンが女王様の頭の上から声をかけました。
「だ、大丈夫です。それに、この鎧を着ているので痛みはありません」
女王様は槍を杖にしてなんとか立ち上がると、森の中を見回しました。
森の中は見渡す限り木でおおわれていて、夜のように暗く、何があるのかうまく見えません。
それに、森に降りてからというもの、なんだか寒気がして凍えてしまいそうです。
「ヒューン、ここは少し寒いわね」
女王様が言うと、ヒューンも、
「そうですね。暗い闇の中はいつもこんなものですよ」
と言って、女王様の足元に降り立ち、体を震わせました。
「もし、体が寒くなって動けなくなりそうだったらすぐに私に言ってください。ラム酒を飲めば体が暖まるはずです」
「闇の寒さに勝てるものをもっているなんて、素晴らしい!それさえあれば、きっと魔女を見つけることが出来ますよ」
ヒューンはにっと笑うと、寒さを忘れたかのように元気に飛びあがりました。
「以前、この黒い森の上を飛んでみたことがあります。上から見なければ分かりませんが、森の真ん中にぽっかりと木も何もない真っ暗な空間がありました。私が思うに、最悪の魔女はあそこにいると思います。真っ直ぐ森の中心に向かって進んでみましょう」
ヒューンはそういうが早いか、森の中心目指して飛んでいきました。
「あっ、待ってください」
女王様も慌てて森の中へと入っていきました。
けれど、二人はすぐに困り果ててしまいました。
辺りが暗すぎて、右も左もわからなくなってしまったのです。
どちらからきて、どちらの方へ行こうとしているのか全くわかりません。
それに、木の枝やつるが邪魔をしてなかなか思うように進めません。
「女王様ー」
「ヒューンー」
二人の声だけが闇のなかに吸い込まれるようにして消えていき、とうとう女王様はヒューンの声が聞こえなくなってしまいました。
「ヒューンー。どこなのー?」
女王様がいくら声を出しても返事はありません。
「どうしましょう」
女王様はどちらへ歩けばいいのか、どうしたらよいのか困ってしまいました。
「仕方がありません。一人で進むしかありませんね」
女王様は右手に向かって足を出しました。
けれど、ヒューンの声がしなくなり、女王様は急に真っ暗闇が怖くなりました。黄金色の鎧もここではその輝きを失っていました。
女王様は右足を一歩進めたものの、怖くて進むことができなくなってしまいました。
そして、泣きながら手探りで袋をたぐりよせると、ラム酒の瓶を出して口をつけました。
怖さを忘れようとするあまり、女王様はグイグイと飲み続け、疲れもあってか、そのままパタリと眠ってしまいました。