天使の涙 | 島村寺子屋まなび塾&ハポス治療院  公式ブログ

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国家資格の柔道整復師であり、心とからだのセラピスト歴28年のハポス田島があなたのつらい痛みを一緒に治して行きます。

あなたのその繰り返す痛みと辛さは???
自分自身に向き合う方法を、一緒に考えて行きましょう。


 ここはどこまでも続く青い空に浮かぶ雲の上。
一人の女の子が涙を流して雲の上から下に見える世界をのぞきこんでいます。
女の子は二日前に起こった地震で、家の下敷きになって死んでしまいました。
女の子のお父さんとお母さんはなんとか助かり、女の子だけがこの雲の上の世界に来てしまったのです。

女の子は死んでしまうとすぐにふわふわとこの雲の上まで昇ってきました。
雲の上からは世界中のどんな所でもすみずみまで見渡すことが出来ました。
女の子は始めのうちはおもしろがっていろいろな所を見ていましたが、しだいにお父さんとお母さんのことが気になり始め、お父さんとお母さんがいる所ばかり見るようになりました。
そして、二人が女の子のために休むことなく涙を流している姿を見て、女の子はとても悲しくなりました。
「私はここにいるよ。泣かないで、お父さん。お母さん」
そう女の子がどれだけ雲の上から叫んでも、二人には少しも届いていないようでした。
女の子は悲しみのあまり泣きたくなりましたが、できませんでした。
それは、女の子がこの雲の上の世界にやってきた時、真っ白な服を着て真っ白な髭を生やした神様にこう言われたからでした。
「ここは天国。死んでしまった人達が来るところだよ。ここでは何をしてもいいけれど、一つだけしてはいけないことがあるんだよ」
「してはいけないことって?」
「それは、泣くことだよ」
「どうして?」
女の子は神様にたずねました。
神様は女の子をやさしく見つめると、こう言いました。
「死んでしまってここに来た人たちは、永遠に生き続けることが出来るんだよ。でも、泣いてしまうと、その永遠の魂がすりへってしまって、消えてなくなってしまうんだよ」
女の子は何度も何度も涙が出そうになりましたが、神様が言ったことを思い出して、必死になって涙をこらえました。
消えてなくなってしまうなんて考えただけでもおそろしかったからです。
女の子はそれでもくる日もくる日もお父さんとお母さんを見続けました。
お父さんとお母さんは地震で崩れてしまった家から荷物を運び出し、他の場所へと運び出しています。
女の子は楽しく三人で暮らした日々を思い出し、その思い出の場所がなくなってしまったことがとても悲しくて仕方ありませんでした。
お父さんもお母さんも女の子と一緒にいたときのように明るく笑うことがなくなり、いつも悲しそうな顔をするようになってしまいました。
どうして私の声は届かないの?届けば少しは笑ってくれるのに……。
悪いことなんて何もしてないのに、どうして?私をおうちに帰してよ……。
女の子は体の中いっぱいに悲しみがたまってしまいました。
そして、どうにかしてお父さんとお母さんに元気になってもらおうと思うようになりました。
けれど、女の子が一生懸命考えても、どうしたらいいのかまったく分かりませんでした。

 そんなふうに女の子が考えるようになったある日のこと、女の子は一つの雲から雨のしずくが地上に降り注いでいるのを見つけました。
女の子はどうして雨が降るのか不思議に思い、神様に聞いてみることにしました。
「それはね、誰かが悲しみのために泣いているんだよ」
と神様は悲しそうに女の子に言いました。
女の子は神様が言っていたことを思い出して言いました。
「泣いてしまうと、消えてなくなってしまうんですよね?」
「そうだよ。この世界からは消えてしまう。けれど、その魂は雨になって地上の世界に降るんだよ」
と、神様はゆっくりとうなずきながら言いました。
それを聞いて女の子はあることを思いつきました。
「ここから話しかけても聞こえないのなら、私の魂を雨にかえてお父さんとお母さんのいる世界に降ってはげましてあげることができるかもしれない」
そう思うと、ぴょこんと頭を下げて神様にお礼を言うと、すぐさま二人のいるところのちょうど真上に雲を移動させました。
もちろん、女の子は自分が消えてしまうことが怖くないわけではありませんでした。
けれども、女の子は自分が消えてしまうことよりも、お父さんとお母さんが悲しんでいることのほうがつらかったのです。
女の子はお父さんとお母さんを見つけると、勇気をふりしぼって二人のことを思いながら涙を流し、こう言いました。
「もう泣かないで、私のために……」
「笑って、私のために……」
すると、どうでしょう。女の子の小さな体はしだいに透明になって見えなくなり、女の子の流した涙が雨となって地上の世界に降りはじめました。
地上にいたお父さんとお母さんは突然の雨に傘もささず、雨に打たれていました。
二人が雨にあたると、どこからか死んでしまったはずの女の子の声が聞こえてきました。
「もう泣かないで、私のために……」
「笑って、私のために……」
二人は思わず目を見合わせました。
「あの子の声が聞こえる」
お母さんが目を輝かせて言いました。
「聞こえる。泣かないでって言ってる」
お父さんも目をこれ以上大きくならないぐらい大きくして言いました。
女の子の流した涙が雨となり、女の子の声を伝えてくれたのです。
お父さんとお母さんはそのあたたかい雨の中で空を見上げて女の子に誓いました。
「もう泣いたりしないよ。笑っているよ」
そして二人は涙をふき、にっこりと微笑みあいました。
 

 雨はそれからまる一日降り続き、ぱったりとやみました。
雨がやんで一週間もたつと、女の子の家があった所や、周りのさまざまな所に緑のちいさなはっぱが生えてきました。
女の子の魂は雨となって消えてしまったけれど、その雨がまた新しい命を生んだのです。
 

 雨の降る日は耳を澄ますとそんな人たちの声が聞こえてくるかもしれませんよ。