【第一話】
”聞こえるよ宇宙の声が”
ザワザワザワ、ザワザワザワ
木々のざわめき、その枝葉を揺らして互いにざわめき合っている。
チチチチチ
小鳥のさえずり、
ザワザワザワ
その声を掻き消すかのように、また木々がざわめきはじめる。
(来た)
何者かのその声は、瞬く間に広がり、周囲のざわめきはより一層強くなる。
シーン
一瞬の静寂が横切る。その刹那・・・
「ぐおおおぉぉぉ!!」
けたたましく響く獣の咆哮!
ザザザザザ、バキバキ!!
大地を激しく踏みしめる音がその静寂を破り、折り飛ばされた木々たちの悲鳴が周囲にこだまする。
「ごめんよぅ」
その姿を横目に見ながら、勢いよく少女が飛び出してきた。
「ぐおおおぉぉぉ!!」
その後に続いて獣も姿を現す。器用に木々の間をすり抜けていく少女。激しい怒りをあらわにしながら、木々をものともせずに少女に突き進む獣。
「悪かったって言ってるじゃない」
問答無用とばかりに少女の隣の木が薙ぎ払われ、獣がけたたましい雄たけびを上げる。
「あっぶな! 君が最後まで取っておいた木の実を、僕がうっかり踏みつぶしてしまったことは謝るよ。あれは・・・不可抗力だ」
獣の雄たけびと共に、さらに隣の木がなぎ倒される。
「僕も確かに悪かったかもしれない。だけど、あんな所に置いておく君も、君だよ」
少女が獣に詰め寄る。ひときわ大きな雄たけびを上げて獣が両腕を振り上げる。
「ちょ !まっ! それはまずいでしょ!」
ズズン!! 激しい衝撃で地面が揺れる。土煙が舞い、驚いた鳥たちが一斉にはばたく。フーッフーッという獣の粗い息遣いだけが静かに響いている。
「何やってんだ! 危ないだろ!」
その声にハッとする。少女の上に覆いかぶさるように一人の男がいた。男に助け起こされながらふと頭をよぎる。
(助けてくれたのか?・・・誰だこいつ?)
「いたたた。・・・てか、あーっ! 右ひじ擦りむいてんじゃん!」
「それくらいで済んでよかっただろ。あのままだったら今頃ぺしゃんこだぞ」
「あのくらい大したこと無いよ。それより・・・危ない!」
少女が男を突き飛ばすのと同時に、獣の右腕がさっきまで男がいた場所をかすめていった。
「これで貸し借り無しね」
「お前な。誰のせいでこうなってると・・・まあ、話は後だ。今はこいつを」
獣に向かって剣を抜く男。その姿を見て獣の目が鋭さを増す。じりじりと距離を詰めていく男と獣。緊張感が高まり、勢いよく一歩踏み込んだその時。
「止めてーー!!」
少女の声が二人の間をつんざく。
・・・つづく
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