【第2章3話】
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前回のあらすじ
王都へ向けて旅立った5人。
その道すがら出会ったオルゲン一家に別れを告げゴットンの街へ・・・
ミンシアが目を覚ますと、豪華な装飾のひらひらとしたレースの飾りが目に入ってきた。
(ここは?)
手を動かすと、そこがふかふかのベットの上だということがわかった。
(え? 何? 僕、今夢の中? それとも、死んじゃった?)
余りのありえない状況に何が起こっているのか混乱している。確か僕は・・・。あの男に後ろから羽交い絞めにされて・・・。で、このふかふかベット・・・わからない! 思わず『あーん!』と唸って頭を掻きむしる。コンコンと扉がノックされ、従者を従えた一人の男が入ってきた。
「お目覚めはいかがかな?」
「あ、えっと・・・だれ?」
きょとんとしたままミンシアは目の前の綺麗な衣服に身を包んだ男を見つめていた。まだ少し頭がぼーっとする。
「私はゼメシス。この国で宰相をしている。君のことをここへ連れてくるように言ったのも私だ。」
ゼメシスの言葉を聞いても、ミンシアはピンとこないようで、首をひねったまま“?”という表情をしている。
「え? さいしょうさんって偉いの?」
予想していなかったミンシアの反応に今度はゼメシスが面食らっていた。
「ふふふ、ははは。そうか、そうか。宰相というのはだな・・・ここの館を綺麗にする人のことだ。」
ゼメシスが両手を広げてこの館を示したかと思ったら、ホウキで掃くような動きをしてみせる。
「え? そうなの? なーんだ。使用人さんなんだ。」
少しほっとしたのか、膝にかかっていた布団をバタバタとしだすミンシア。
「・・・嘘だ。」
ゼメシスが急に真面目な顔をしてミンシアを見た。
「・・・えっ! 嘘なの!」
ミンシアが驚きのあまり目を丸くしてゼメシスを二度見した。ゼメシスはミンシアのリアクションを楽しむかのように『くっくっく。』と笑った。
「僕、嘘キラーい。」
ミンシアは目を細めてゼメシスを睨みつけながら、頬を膨らませたかと思ったらぷいっと向こうを向いてしまった。ゼメシスはそれでも笑いが収まらないらしく、はっはっはと笑いながら『すまない。』と一言言った。ミンシアはその反応にまたイラッとして、軽く口をぽっかり空けたと思ったら、またぷいっと向こうを向いた。
「どうやら部下が手荒な真似をしてしまったみたいだが、私は君に力を貸してほしいのだ。その君の力を・・・私に。」
ミンシアは何も答えずに、ただきょとんとした顔をしてゼメシスを見つめた。『フッ。』と短く笑ったゼメシスは、『気が変わったら教えてくれ。』と言い残して部屋を出て行った。自分をさらえと命令した偉い人・・・。ミンシアには悪い人のようには思えなかったが、何か引っかかるものを感じていた。だがそれが何かはわからなかった。ばふっと布団を頭からかぶって、ミンシアはベットに突っ伏した。
部屋の外に出たゼメシスは、前方で壁にもたれかかっている双剣の男を一瞥しながらすれ違いざまに口を開いた。
「キルト、くれぐれも彼女から目を離さないように。」
「わかってますって。」
キルトと呼ばれた双剣の男が、両手を頭の後ろに回しながら答えた。ゼメシスは前を向いたままキルトを見ることもなく通り過ぎ、自室へと戻って行った。
街に入ると至る所で嫌なものを目にすることとなった。掲示板やら街の壁などに張り紙がされていた。そう、ヴァイト、ヒューラ、ネルセン、マーラの手配書だった。初めは『何だろうね~? この手配書。』的なノリで見ていたが、よくよく注意書きを見てみると『あれ? ひょっとして私達じゃない?』となって、急にオロオロと周りの視線が気になってソワソワと周りを見渡した。特にネルセンは王国騎士団である自分が手配書となっていることにかなりのショックを受けていたようで、がっくりと肩を落としていた。一人だけ除け者にされた気分のエリオスが人知れず落ち込んでいたのは、ここだけの話にしておこう。ただ、余りにも似ていないその似顔絵と、名前が明記されていないことにネルセンは少しだけほっとしているようだった。その後は、『俺の目はこんなに吊り上がってねぇ!』とか、『私はこんな不細工な顔してないわよ!』とか、『点と線だけの顔っておかしくね?』とか、『私の似顔絵だけ何か淡い気がするのですが。』とギャイギャイと言いたい放題言いながら、みんなその似顔絵に向かって怒りをぶちまけていた。きっとミンシアが居たら、似顔絵にいたずら書きをしていたに違いない。そんなことがふっとみんなの頭によぎって、少しアンニュイな気持ちになった。
兎にも角にも、気持ちは逸るが今日の宿を探さなければならない。この街には宿は三軒しかないが、うち一軒は改装中で営業していなかった。他の二軒も回ってみたが、何故か示し合わせたかのように満室となっていた。
「どうしよっか?」
ヒューラが困った顔をしながらこちらを向いて反応を伺っている。
「どうもこうもな・・・。」
ヴァイトも、いかんともしがたいというように両手を広げてみせる。ネルセンが通りがかりの人を捕まえて尋ねてみた。
「あの、宿を探しているのですが、どこも満室みたいで・・・。」
「ああ、何やら最近、この先で遺跡が発掘されたらしくてな。お宝を狙う冒険者どもがうようよ・・・余り変なごたごたを持ち込まないでくれるとありがたいが。」
そう言って、そのおじさんは迷惑そうな顔をしながら少し小声になった。ネルセンが『はあ。』と愛想笑いを浮かべている。
「お? そういやあんた・・・どこかで会ったか?」
おじさんがもっと思い出そうとしてネルセンの顔を覗き込んでくる。
「え? いや、そんな! 初めましてですよ。じゃあ、ありがとうございました。失礼します。」
そそくさとネルセンがおじさんのそばから離れる。あんなくそ似ていない似顔絵でも効果があったのだろうか? ・・・まさかな。それでも一応、目立つことは控えなければいけないなとネルセンは思った。とにかく、宿はないらしい・・・どうしたものか・・・。
「よっ!」
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