【第十四話】
前回のあらすじ
ヴァイトの里に着いたかと思われたその時、先頭を行くミンシアの足元に矢が!
ヴァイトの呼びかけにより姿を現したのは、エリオスと名乗る獣人族の青年だった。
エリオスに案内されてヴァイトの里、メンデルに足を踏み入れる。
「兄さま!」
「マーラ!」
ヴァイトの姿を目にしたマーラがその瞳に涙を浮かべながら駆け寄り、ヴァイトの逞しい胸に顔を埋めた。ヴァイトとマーラが再会の喜びに包まれる中、僕達はそっとその場を後にして、エリオスに案内してもらいつつ里の中を見て回ることにした。森の木々に馴染むかのように家が並んでいる。森の奥へ足を進めると、切り立った崖が見えてきた。その崖に小さな扉がついているのが見える。扉の前に立つとエリオスが中に向かって声をかけた。くぐもった声が中から聞こえてくる。エリオスは皆に中に入るように促した。
「ここは?」
「長老の家です。何千年と続く獣人族の歴史を語り継ぐ語りべ。私達には耳たこですが、あなた達なら面白い話が聞けるかなと思って。」
入り口をくぐると、中は思いの外広かった。伝統的な衣装なのだろうか? 民族的な装飾品が、土でできた壁を色鮮やかに彩っている。奥の部屋から近づいてくる人影が。一人の老人が姿を現した。
「ようこそおいでなすった。この里に客人とは、何十年ぶりじゃろうか。ゆっくりしてお行きなさい。」
「ありがとうございます。」
物珍し気に周りを見渡していた皆が、大きなテーブルの周りに腰を掛ける。ポントがササッとネルセンの椅子の下に潜り込みうずくまる。ミンシアが好奇心旺盛な子供のように目を輝かせながら、待ってましたとばかりに長老に声をかけた。
「ねえねえねえ! あれ何? あれ!」
「ちょっとは落ち着けよ。」
「恥ずかしい。」
ネルセンとヒューラが縮こまる中、長老が笑いながらミンシアの問いかけに答える。
「まあまあ、そうお気になさんな。あれは、獣人族の古き言い伝えを絵にしたものじゃ。」
「昔話? 面白そう。」
「ミンシアが期待しているようなものじゃないと思うよ。」
「お子様にはまだ早いかもね」
「ヒューラまで! ぶぅー!」
ミンシアが頬を膨らませて二人に抗議する。
「ふぉっふぉっふぉ。なるべくわかりやすく伝えてやろう。」
その様子を微笑ましく見守っていた長老が、獣人族に伝わる伝説を静かに話し始めた。
「心配をかけた。元気にしていたか?」
一年ぶりに再会した妹に軽く声をかける。
「本当にそう思っておいでですか? 兄さまはいつもそう言って私のそばから離れて行ってしまう。」
「まあそう言うな。二人きりの兄妹なんだ。心配しない訳ないだろ。」
「そういう事にしておきます」
必死に取り繕うヴァイトの姿に、ふとヴァイトに背を向けたマーラは、その顔にくすくすといたずらな笑顔を浮かべた。
「あの方たちは・・・」
そう言って不安な表情を浮かべるマーラを落ち着かせるように、ヴァイトが語り掛ける。
「心配ない。気の良い奴らだ。お前が人間を嫌っているのはわかる。だが、獣人族にも良い者と悪い者がいるように、人間の中にも良い奴らはいるもんだ。」
「兄さまがそう言うのであれば・・・でも、何か嫌な気配を感じます。」
「気にしすぎだ。人間の事となるとマーラはいつもそうだな。」
「そんなこと・・・ありません!」
ちょっとムキになって否定する妹の姿を可愛らしく感じながら、ヴァイトはポンポンと妹の頭を優しく撫でた。
「大丈夫だ。俺がついている」
その言葉を噛みしめるかのように、マーラが“うん”と一つ頷いた。
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