【第十二話】
前回のあらすじ
何者かの気配に様子を見に行くことになったネルセン。
見つけた人影は白骨死体だった。
思わず驚くネルセンに情けないと言い放つヒューラ。
ホッとしたのもつかの間、すぐそばでの獣の咆哮に腰を抜かす3人。
そこに現れたのはヴァイトだった。
お互いに自己紹介を済ます中、ヴァイトがこちらの様子をうかがう白い生き物に気が付く。
「すっかり忘れていたね」
「か、かわぅいい!」
もう、女の子二人の心を鷲掴みにして離さないその白い生き物は、どうやらヴァイトを警戒しているようだった。
「ヴァイト、すまないけど私達から5mほど離れてくれないかしら?」
「取って食ったりしないから大丈夫だよ~、たぶん」
「ずいぶんと嫌われたもんですね」
ポリポリとヴァイトが頭を掻く。
「名前を呼んでみたらどうですか?」
「え? 名前なんてあるの?」
「いや、よくわからないですけど」
「フランソワーズ」
じっとこちらの様子をうかがっていた、白い生き物がサッと木の陰に隠れた。
「何ですかその名前?」
ヒューラの頬が赤く染まる。
「い、いいでしょ別に! あんたが名前を呼んだらどうかって言ったんじゃない!」
「いや、そうですけど・・・ねえ」
ネルセンがミンシアに目配せをすると、ミンシアもニヤニヤと笑みを浮かべて視線を返す。ヒューラの顔がさらに赤く染まった。
「いいからあんたも何か呼んでみなさいよ!」
「そう言われてもなぁ」
「マッシュルームポテトグラタン!」
ミンシアの声が木々の間をこだまする中、白い生き物は全く木陰から顔を出さなくなってしまった。
「ミンシア・・・何? そのセンスの欠片もないネーミングは?」
「おいしそうだと思ったんだけどなぁ?」
「食べ物って・・・それ本気?」
「ポ、ポリュート」
今まで黙っていたヴァイトがおもむろに口を開いた。みんなの視線が木陰へと集まる。
白い生き物は、ちらりと顔を出したがすぐにまた引っ込んでしまった。
「ダメかー」
「何が気に入らないのかしら?」
皆がちらっとネルセンに視線を向ける。
「えっ・・・えーっと・・・ポント・・・ポント」
「何それ? ダサいにもほどがあるでしょ」
「いいじゃん別に!」
ネルセンとヒューラがやいのやいのとやり合っていると、おもむろに白い生き物が顔を出して、恐る恐るこちらに近づいてきた。
「おっ?」
「ポント!」
ネルセンがもう一度呼ぶと、ポントと呼ばれた白い生き物はネルセンに向かって駆け寄り。飛びついてきた白い生き物を思わずネルセンが両手で受けとめる。ネルセンの腕の中で白い生き物はキュウーと一声泣いた。
「どうやらポントで決まりの様だな」
「どうして? 私の方がセンスいいでしょ」
「ピンクペッパーペペロンチーノ!」
「諦めろミンシア。それにそんなに長い舌を噛みそうな名前は呼びにくくてかなわん」
「あうー」
「ポント! 今日からお前の名前はポントだ」
ネルセンの両手に高々と掲げられたポントは、嬉しそうにキュウーとまた一声鳴いてみせた。
「ふん。早く行きましょ。面倒なことになる前に」
「こっちだ。案内する」
先頭に立って進みだしたヴァイトの後に皆が付き従う。
「ポント」
キョトンとその様子を見送っていたポントにネルセンが呼びかけると、ぴょこぴょこと跳ねながらネルセンの後をポントが追い始めた。薄っすらと霧が晴れ始めている。霧の晴れ間から差し込んでくる夕日の明かりが、僕達の行く末を明るく照らし出してくれているような。そんな気持ちに包まれながら、僕達はヴァイトが生まれ育った獣人族の里へとその歩みを進めたのだった。
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