【第三話】



前回までのあらすじ

男と獣が対峙する中、獣の一撃を受けた男に駆け寄る少女。

男の様子を見て獣に詰め寄る少女。

話が通じたのか通じてないのか、男の方に向かってくる獣。

まだ思うように体の動かない男の元に、獣がゆっくりと近づいてゆく。




・・・はずだったが、獣は頭を下げただけだった。



「すまん」



「え?」



「だから、すまんと言っている」



なんか、謝られているようだ。獣に。



「え? 言葉・・・話せるの?」



「当たり前だ! 俺をなんだと思ってる」



「人を襲っている・・・猛獣」



「だぁ~! これだから都会の人間ってやつは! 人を見た目で決め付けやがって!」



「あの、えっと、何かすみません」



「ちょっと待ってろ」



 そう言って獣が姿を消すと、茂みから大柄の男が姿を現した。



「俺の名前はヴァイト。獣人族だ」



「へ? 獣人族? うわー! 初めて見た! 本当に居たんだ・・・絵本の中だけの作り話かと思ってた」


「都会に出回っている獣人族の話なんてな、どこかのほら吹きが描いた作り話だろ、本当に迷惑な話だ」




「うわー、そうなんだ。へー」



男はヴァイトと名乗った獣人族の姿をしげしげと眺めては、ほー、へーと言い続け。ペタペタと触っては、ふむふむと頷き。周りをぐるぐると回っては目をキラキラと輝かせた。



「やめろ! 気持ち悪ぃ! 今度は本気でシバクぞ!」



「あ、ごめんなさい。ついつい珍しくて」



「俺は動物小屋の珍獣じゃねぇ! そういうお前は何者なんだよ」



「あ、これは失礼いたしました。興奮のあまり自分の名前を名乗るのも忘れていました。私の名前はネルセン。王都騎士団の騎士見習いをやっております」



「何だ。ひよっ子か」



「そういう言い方はないですよ」



「ひよっ子はひよっ子だろ」



「そうですけど・・・いつか王都随一の騎士になるんです! あ、サインはお断りですよ」



「いらねぇよ。俺が息をしている間になれるといいな」



「ありがとうございます・・・ってそれどういう意味ですか?」



「それよりも、嬢ちゃん。あんたとの問題がまだ解決していないんだが?」



 少女の方を向くことも無く、背中越しに少女へと言葉を投げかけるヴァイト。



・・・つづく



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