結婚式がしたいけれども、手もとにあるお金は少ない。

結婚前の新郎新婦は、みんなそういうものだ。

堂上だって、結婚式をしようと思い立った時には預金ゼロ。

しかしその時点から2年半の期間があったので、婚約指輪や新居準備金100万円をなんとか作りだし、不足分は親父に80万円借りて、当日はゲストのみなさまのご祝儀活用でなんとかまかなった。

そういうものなのだ。


新郎新婦のみなさん。期間さえあれば、なんとかなる。

できるだけ本番と決心した時期のあいだの期間を長くとることをおすすめする。


堂上の親父は銀行の支店長まで務めた人間だから、

「その明細を書いて報告せよ!」

となり、こまごまとした出費を表組みにして提出したものだ。

「この費用は無駄ではないのか? 出費の根拠を述べよ」

と、銀行の融資並みに突っ込まれたが、こちらは婚礼ジャーナリストである。

いちいち納得してもらえるよう説明を施したものだ(笑)。

その父ももう他界して、13周忌が昨年だった。


そんなことよりも、ご祝儀の存在が若いカップルにあまりにも知られていないので有効活用させていただいた堂上にしてみれば、実に気の毒だ。

すなわち、「お金がないから結婚式はしない」というものだ。


ふたりの若い夫婦の末長い幸せを願い、その周囲の人たちがボランティア精神から自らの財布の事情が許す範囲でお金をふたりに贈呈する。それがご祝儀。

「家具や家電も必要だろうし、ふたりを新婚早々、お金のことで苦労させたくない」

そんな真心のこもったお金がご祝儀だ。


つつしんでいただいた側の新郎新婦、両家は、その額にかかわらず、その気持ちを嬉しく受け取る。

つまり、金額ではない。あくまでも気持ちをいただくのだ。


一人前の社会人であれば(という条件と、フリーターや臨時雇いでなければという条件がつくが)1万円なんて額を一次会である披露宴に包むことはない。きちんと自らの立場をわきまえ、この施設の料理と引き出物をいただくのであれば、少なくともあまり赤字にならないように、などと配慮するものだ。


ところがどっこい、この平均額を算出して公表する企業がある時から現われた。

まったく無粋なマネをするものだ。

さらに不幸なことに、ご祝儀を包む側のゲストたちは、「平均額」というわかりやすいモノサシができて助かったとばかり、一見、便利になったように錯覚してしまった。


自分の頭で考えないで、マニュアルに頼るとこういうことになる。

自分と新郎新婦との関係をおしはかり、周囲の人々の包む額を聞けば、おのずと金額は出てくるのに、「ああ、面倒だ」とばかりにマニュアルに頼ってしまう。

面倒なのであれば、出席しなければいいのに。


その結果、日本の迎賓館とまで称されるTホテルでの結婚式であろうが、昨日今日できたばかりのあやしげな結婚式場であろうが、「同じ職場の同僚が包むお祝金の平均は2万円」という単なるデータにまどわされ、マニュアル通りにみんなが2万円包むという事態が発生するという大惨事が勃発したのだ。


Tホテルのウエディングは、ゲストあたり5万円以上はかかる超高級ホテルである。

もちろん現在ではそれ以上に高価な外資系ホテルもあり、またゲストハウスもある。

しかし、結婚式は会場によるのである。せっかくゲストが先述したような新郎新婦への激励の気持ちで包んだ「平均2万円」ではあるけれど、残念ながら会場によってはその気持ちが反映されない。ふたりに伝わらない。


惨事はTホテルにとどまらない。

ゲストたちは、上質なゲストハウスで結婚式をしたら、いくらかかると思っているのだろうか。

Tホテルよりも高い会場はけっこう多いのである。

さらに地域差もある。

東京と大阪、福岡ではアルバイトの時給も違うのである。


無論、招待人数がホテルよりも少ない傾向にあるゲストハウスの人数をその総額で割れば、当然高単価になるわけだが、そうした事情も一切知らない一般のゲストたちに、平均額だけ垂れ流し報道するのは、メディアの姿勢としていかがなものだろうか。


実は昨秋、あるデータの裏取りのために、堂上に問い合わせてきた放送局、新聞社があった。

素晴らしい姿勢である。メディアの皆が、真の読者メリットのためにそのような深堀りをする姿勢であれば良いのにと思う。