ハッピーなマチ日記+セイ -20ページ目

ハッピーなマチ日記+セイ

元気すぎるヨークシャーテリアの兄弟の日々を綴ったブログでしたが、ハッピーもマチも虹の橋に旅立ちました。そしてセイくんが我が家にやって来ました!

いつも『宇宙犬マチ』を

お読み頂き、有難うございます。

ついに最終回を迎えました!

長い間、お読みいただき

有難うございました(^.^)

ご感想などを

頂戴できると嬉しいです!

カッピー

 

『宇宙犬マチ』  最終回

 

十八 幸せ マチとヒロキ

僕は宇宙犬、マチ。
僕が宇宙の果てから地球に来て、かなりの年月が経った。
いまは大好きなおとうさんと、自然がいっぱいの山の中で暮らしている。
時々地球の調査・研究レポートと現状報告を、宇宙に送っているけど、あとは普通の犬として暮らしていている。レポートの送信も、そろそろ最後に近い。もう地球には仲間はいない。
三年の猶予が与えられ、地球が“悪”ではないと判断されてすぐに、一緒に調査をしていた残りの全ての仲間は宇宙に還った。
僕は、どうすべきだろうと考えたが、もう少し地球のリサーチを行いたいと願い出た。どうせ家族はいないし、宇宙に戻れば、すぐに他の星に向かうことになるだけだ。地球には、ヒロおとうさんという愛すべき家族がいる。
指令からは、そのままだと犬の寿命が来たら死ぬこととなる、ということを伝えられた。
それでいいと思った。実はあまりにマチに宿っていたために、離れることが難しい状態になってしまっていた。こんな事例は聞いたことがない。
でも、いま、おとうさんと暮らしていてとても幸せだ。時々、優しいおかあさんのことを二人で思い出している。今日も、縁側で満月を見上げると、あの楽しかった日々が蘇ってくる。急におとうさんが、僕の頭に手をやって「マチ、ありがとう。幸せだったかい?」とポツリと言った。
幸せという感情、喜びという感情、悲しいという想い。これらを地球で得ることができたんだ。僕たち宇宙の生物がずっと失っていたもの。
もちろん、感情の発生メカニズムデータも宇宙に送り届けてある。きっと宇宙の今後に役立ってくれるはずだ。
僕はもうすぐ犬として十七歳になる。もう長くは生きていられないだろう。もう充分長く生きた。愛する家族と素晴らしい自然に囲まれて、最後を迎えられるなんて、なんて幸せなこと! そしてもうひとつ大きな喜びがあるんだ。
“地球はまだある”ということ……。
ああ、これで、よかったんだよね? 

                                                      <了>
 

いつも『宇宙犬マチ』を

お読み頂き、有難うございます。

第14回をアップします。

いよいよ次回で最終回です!

お楽しみ下さい(^.^)

カッピー

 

『宇宙犬マチ』 第14回

 

十八 最終 マチ

僕には、おかあさんとおとうさんという家族ができた。おとうさんも、僕の存在をより大切に思えるようになっていたみたい。しばらく、打ちひしがれて、落ち込んでいたおとうさんは、悲しみを胸に持ちつつ、元気を取り戻して動き出した。おかあさんの分まで……
僕はその後も地球と人類の動向を調査し、その成果を宇宙司令に報告を続けた。研究は確実に良い方向に動いていた。世界中の人たちは、手を取り合ってウイルス対策に挑み、共存を図れる体制を構築し、つまらない諍いもなくなっていった。進化はしなくなっていたが、生き続ける道を探った。
人間には、素晴らしい適応力があり、今度は自然との共存と環境を守るという方向に世界規模で向かうようになった。
僕が一番恐れていたのは、人が人らしくいられるか、ということであった。欲望を取り除くと、進化・進歩は止まることはわかっていたが、感動とか喜びといった感情も失われてしまうのではないだろうか?と。 しかし人類は立ち止まることはなく、楽しみを見つけ出していた。それは自然を研究し、様々な生き物と共存し、楽しむことと動物と過ごす愉しみ。そして旅に出ることや、美しいものを見て、音楽や芸術を楽しみ、美味しいものを食べる事。しかも、貧富の差や人種の違いは次第に意味を失ってきていた。新しい仲間や友人を見出し、その輪を広げること。芸術を中心に新しい創作を行うこと。時間をそれらに費やすことに喜びを感じるようになってきたみたい。
おとうさんは、自分が書いた小説や写真を通じて、世界中の貧しい人々を救い、動物の保全にも動き出した。それはおかあさんの意志でもあったはず。
僕は、すっかり立ち直ったおとうさんの姿に安心し、人というものの素晴らしさを感じていた。
僕はおとうさんとできるだけ一緒にいて、旅もすることができた。少しでもアドバイスできるように、夜中に匿名のアドバイスもメールにいくつか送信した。
一時、僕たち宇宙犬が、地球の全ての運命を握っていると思っていた。しかし、大きな間違いだった。僕たちにも予想できなかった方向に人類は動き出した。もう大丈夫と、思える。

調査を延長して、猶予の三年近くが経った。
僕はおとうさんとの信頼関係を築き上げていた。
おとうさんは、どんなに忙しくても、僕を想って大切にしてくれた。そして最後の報告を宇宙司令に送るための準備の時が来た。
データは膨大だったが報告書は、一時間ほどでまとまり、仕上がった。現状、人同士の小競り合いはあるものの、戦争や紛争は一年近くもなく、兵器の開発・製造は新たに行われず、従来の兵器は放置さえたままだった。各国の軍隊は、国際的な救助隊となり、人々や生き物たちを助ける役割を担い、大きな戦争を起こすことはないと断言できた。
こんなに早く変化を起こすなんて――。欲望の制御と共に、凶悪なウイルスの登場が急激な転換を起こしたんだろう。
もともと多くの人の心には安定と平和という願いが宿っていたに違いない。だからこそ、真の姿を取り戻しただけのような気がする。ほんの一部の欲望にまみれた悪人の心が変わっただけで……。
ひとつだけ問題なのは人口やそのほかの生き物たちの増加であった。戦争や紛争で死ぬ人がいなくなり、環境の変化により自然災害も減りつつあったからである。だが、それもいずれ解決することだろう。世界が一体となった善良な人たちの英知と正常化した自然の摂理によって――

僕は研究をしてきたものの大量のデータを特殊な方法で折りたたんで添付して、最終報告書を完成させた。
地球に残っている二人の仲間と力を合わせ、三人の宇宙犬が合意をした報告書を最終決定できたのは、三年の期限の三日前だった。そして本日完成させた報告書を、あとは宇宙司令に向けて送信するだけだ。
その夜おとうさんはハードワークに疲れたのか、ソファーにもたれ掛かったまま、居眠りをしていた。顔をじっと見る。その皺が多く刻まれた顔の表情には優しさと充足感に満ちていた。“ああ、よかった”という喜びの感情が込み上げてきて、僕はソファーに上って、おとうさんと添い寝をした。幸せな夜だった。
また、なぜか眼から水滴が流れ出た。嬉しくても泣くことがあることを、その時初めて知って、さらに嬉しい気分なった。
翌日の夜、僕たちが行った地球改革によるレポートと調査・研究をまとめた報告書を宇宙司令に発信した。これで全ての任務が終わった。あとは宇宙評議会の決定と、今後の指示を待つだけだった。フランスと中国にいた仲間は使命を終え、先に宇宙に還っていった。宿犬の寿命がつきかけていたから急いだのだ。
そして、二日後に返答が来た。
もう地球は、宇宙にとって脅威ではなく、定期的に監視を続けるだけでよいとする。研究レポートは今後に役立つものと認められ、後に報奨が与えられる。という素っ気ない回答があり、僕には戻ってくるようにとの指示が添えられていた。
僕は還りたくはなかった。地球には家族がいる。おとうさんだ。離れたくないし、地球見守っていきたいという気持ちもあった。そして、おとうさんの仲間ももう友達なんだ。
こんなことを真剣に考えるなんて、信じられない。でも僕にはすでに感情が芽生え、形成されていた。
もう少し、地球にとどまり調査・研究を行いたい。そして、もうしばらく常に監視は続けた方がよいと、宇宙司令に伺いを立てた。
もう何百年もの間、宇宙の様々な星に派遣され、流浪の旅を続けてきた。そろそろ終わりにしたいとも思うようになっていた。そんな時に地球に来て、優しい人たちに出会えた。これは人の言で“縁”と言うらしい。
指令からすぐに返信が来て、そこまで言うのであれば、成果を勘案し定期的にレポートを送るという約束で留まってもよいと。「ただし、そのまま宇宙犬でいると、宿犬が死んで、そのまま消えてしまうことになるが、それでもいいのか?」と伝えてきた。
僕は、それでいいと思った。愛するおとうさんの近くで、死ねるのであれば……。自然と幸せな感情が身体いっぱいに満ち満ちた。
地球で生を終える。これが僕の“定め”だったのかもしれない。
僕は宇宙犬から地球の犬『マチ』になれたんだよ!

Ⅻ 意志 ヒロキ

 平和になりつつある世界の片隅で、僕は何をすべきかを考え、執筆と共に、様々な問題かかえ困っている人に役立てる活動を仲間とスタートした。それがリサの意志を継ぐことだと思えたのだ。
 凶悪なウイルスも終息し、その活動のため移動するときも、マチを同行することも多くなった。マチは相変わらずちょっと変わった犬だったが、たくさんの人に癒しを与える力があり、どこに行っても、おとなしくしていて、なぜかみんなが触れに来る存在なった。触れるだけで、心が和らぐいというのが、ほとんどの人の意見であり、僕たちの役に立ってくれた。ハッピーの時と同じように、リサの心も意志も取り込んでくれたように思えた。
 一緒に旅に出ると、あのリゾートホテルにみんなで行ったことを思い出す。あの幸せなひと時、一回だけチワワに唸ったことも、今となっては良い思い出となっていた。


 ウイルスを克服し、本物の平和な地球が訪れようとしていた。マチは前ほど活発に動かなくなり、さらに寝ていることが多くなっていった。歳のせいだろうが、今日も昼寝をしながら訳の分からない言葉をウニャウニャと喋っている。まるで誰かと交信しているかのように……。そういえば三年くらい前にもこんなに疲れていたことはあった。あの時、夜中に何かを見た気がした。その時から、殺人ウイルスの拡大と利己主義の消滅という人類の平和のための大きな転換期がやってきたのだ。まあ、関連はあるとは思えないが、マチの行動があの時と同じような気配がしてならなかった。
 そしてある日マチが朝、起きることなく、そのまま寝続けていた。どんなに呼んでも摩っても起きない。僕は心配になり、出かける用事もなかったので、マチを見守り続けた。何度読んでも、耳を左右に動かすだけで、目を覚ますことはなかった。病院に連れて行こうとも思ったが、ある予感がして、そのまま見守り続けた。
 マチの表情は安らかなもので、時々口の回りや足をピクピクさせる。レム睡眠のノンレム睡眠がサイクルでやってきているのだろう。そのまま昼が過ぎ、外が暗くなり始めたころ、マチはいきなり目を覚まし、僕の目の前にちゃんとお座りして、“クゥーン、クゥーン”と喋り始めた。その合図は、“お腹が空いた。ごはんをおくれ!”というものである。すぐに慌ててパックとカリカリフードを用意して、食事台に置くと、一気に食べきって、今度は玄関の方に行き散歩をねだってきた。すっかり暗くなった外に出る。だいぶひんやりとしてきていたが、マチは外に出るなり駆け足でいつもの場所まで行き用を足した。元気そうだ。
ああ、いつものマチが戻ってきたと思え、嬉しくなった。空を見上げると、下弦の細い月と赤い火星が輝き、すぐ隣にはオリオン座が見えていた。ふと僕が足を止めると、マチも星が煌めく空を見上げていた。何か懐かしいものを見ているような、うるんだ瞳であった。
 次の日は、朝からいつものマチに戻っていた。リサを失くした僕にとって、ずっとマチは相棒であり、唯一の愛すべき家族である。その想いが日に日に深まっていった。

 いくつかの活動に目途が立ったころ、僕は自然に囲まれた山の中に引っ越すことにした。マチも歳を取り、動きが緩慢になってきて、都会生活に合わなくなってきていたのだ。
 そしていま、すっかり普通の老犬となったマチと共に山の中で暮らしている。今や世界の国々は一体化し、諍いはほとんどなくなっていた。そんな中でも、今までのつけともいえる環境、気候変動、温暖化、差別、貧困という問題があぶり出されてきて、それらに関するアドバイスを、ネットワークを活用して行っている。緑に囲まれながら、どんなに平和な世界であっても、困っている人や動物、生き物や自然はまだ膨大に存在しているのだ。彼らにとって少しでも良い環境に進めるように、仲間と共に執筆活動を通じてアドバイスをしていく。これが僕にできることであり、リサの意志を継いでいることになる。そのためにもこの自然が溢れるこの環境は最適なのだ。
 隣にはマチがいる。なぜか彼がこの道筋を作ってくれた気がしてならない。愛する地球に対して微力ながらも、誠意をもって力を尽くす。これこそこの山の中にいる二人の大きな使命なのだ。「そうだよな、マチ!」といつものように彼の頭に手を置く。“クゥーン”とマチが同意してくれた―――。
(以降、1月31日掲載予定の最終回に続く)

いつも『宇宙犬マチ』を

お読み頂き、有難うございます。

第13回をアップします。

よろしくお願い致します(^.^)

カッピー

 

『宇宙犬マチ』 第13回

 

Ⅺ 突破口 ヒロキ

 リサの葬儀は、ウイルス感染予防の関係もあり、僕とマチが立ち会っただけとなった。しかし、多くの人がオンラインで参列してくれて、その数は予想をはるかに超えたものだった。そして次から次に入ってくるメッセージ。こんなにたくさんの温かく、愛に満ちた言葉の数々……。僕はリサがこれまでやってきたことの影響力と大きさを初めて知ることになった。多くの人々に感謝され、惜しまれて、リサはハッピーのいる虹の橋のたもとに旅立ったのだ。
 隣にいるマチはリサの写真をじっと見続けて、決して視線を外さない。オンラインで流れる長いお経の間、ポンと彼の頭に手をあてる。僕を見たその目は、明らかに悲しみに沈んでいた。「ありがとう、マチ。リサは幸せな人生だったと思うよ。マチとハッピーがいれくれたおかげさ……」と小さくつぶやき、頭や胴を何度も撫でる。すると頭の中にこんな言葉が浮かんできた。“間に合わなくて、ごめんなさい”と。それが何を意味しているのかはわからないが、マチがそう言っている気がしてならなかった。

 僕と大学病院に送られたメール同じものが、世界中の研究者や医師に送られていたのを知ったのは、しばらくたってからだった。そして、そのメールを元にして急遽ウイルスの治療薬が開発され、しばらくするとウイルスによるパンデミックは収束に向かっていった。突然のメールにより、以前のように薬の開発を誰よりも先行しようとしいがみ合う状況も解消し、人類は再び手を取り合って平和への歩みを進むことになった。
 ウイルスの特効薬を見出したとされる研究グループは、世界の人々から賞賛されたが、なぜかその実態はどんなに探っても明らかにならなかった。そのまま、その研究者たちの手掛かりすら見つからずに、ついには“神様からの贈り物か、宇宙からの贈り物か?”という話まで出て、捜索騒動はしばらく続いたもの、次第に多くの人の関心事ではなくなっていった。
 僕はそれでいいのではないかと思えてならなかった。誰であろうと、地球は良い方向に進んだのだ。マチはその研究者捜索のニュースをやっていると、耳をそばだてて聴いていることが多かったのがなんとなく不思議ではあった……。

十七 邂逅 マチ

凶悪なウイルに感染したおかあさんの具合は悪くなっているようだ。もう時間がないことは明らかだった。
ウイルスの組成データを地球と宇宙全体のあらゆるデータと照合し、事例を探り続けた。
僕と仲間は、夜通しで、その作業に明け暮れた。
その数は億単位の数にのぼった。その間でも、おかあさんは、日に日に重症化していく。
二日目、中国にいる仲間が、やっと同様な事例と対処方法を見出した。この事例の精度を確認すると八十一%と出た。
たぶん大丈夫だろう。すぐにおかあさんの入院している病院のパソコンにアクセスし、主治医に匿名でメールを送る。間に合ってくれ! 僕は柄にもなく初めて“神”に祈った。メールのデータは、架空の人物を、様々な業績を上げた研究グループとして作り上げ、怪しまれないように、送信した。こんなことはいとも簡単なことだ。すぐに実行した。
そして、自宅にいるおとうさんのメールアドレスにも送信した。良い方向に進むことを期待しつつ……。
夕ご飯の後しばらくしておとうさんのスマートフォンが唸った。嫌な予感がした。
すぐに緊張したおとうさんが対応する。そして画面に向かって語りかける。「僕だよ、リサ、よく頑張ったね。僕の誇りだよ」と呟くように話すおとうさんの頬に水滴が伝って光っている。「はら、マチもいるよ。だから…頼むから行かないでくれ…」。僕は向けられた画面を覗き込んだ。そこには無数のチューブにつながれた、おかあさんがいた。「愛しているよ、リサ!」とおとうさんは大声で唸るように叫ぶ。その時スマートフォンから、“ピーピーピー”とけたたましい警告音が鳴り響いた。僕は、画面に向かって「ワン!」と吠えた、と同時に画面が大きく揺れ天井のようなものが写った。慌てて何か作業をしている音だけが数秒して通話が途切れた。おとうさんは、スマートフォンを投げ出し、ソファーに突っ伏して、「アーアー」と動物のようなうめき声を上げていた。
間に合わなかった、という思いで、僕はどうしたらいいのかわからなかったが、無意識におとうさんに近づき、涙に濡れた頬をペロペロと舐め始めた。塩っ気のある悲しい味がした。それがしばらく続き、いきなりおとうさんが僕を痛いくらいに抱きしめた。そして「リサが天に召されてしまった」とポツリとつぶやき、僕をさらに強く抱きしめた。おとうさんの激しい鼓動が聞こえる。何か声を送ろうかと思ったが、やめてまたおとうさんの手を舐める。その時、今まで体験したことのない感情が背中から這い上がってきた。“悲しい”という感情……。初めての感情だった。それが、頭脳まで到達して、“クゥーン、クゥーン”という声となった。それから、眼の前がひんやりしたと思ったら、水滴が両目からこぼれ落ちた。視界が歪んだまま、おとうさんを見つめていた。間に合わなくてごめんなさい……
おかあさんはおとうさんに会えずに天に逝ってしまった。全ては凶悪なウイルスのせいだ。
しばらくして行われた告別式に出席したのは、体調が優れないおとうさんと僕だけだった。親族などは、ウイルス感染の危険性から参列することは許されなかった。しかし、遠くに離れたところやオンラインでも、たくさんの人がお見送りしてくれた。
おかあさんはどれだけの人を救ったのだろう? その感謝の気持ちのようだった。僕には信じられない光景だった――。


告別式を全て終えて、自宅に帰るとなんだか部屋が広く感じられた。おとうさんが「寂しくなったね、マチ」と言って、僕の頭を優しくなでてくれた。その手はとても温かかった。家族を失うということ、悲しみと寂しさ……身をもって知り、体験することになった。心が痛み、辛かった。

僕たちが考え、病院や研究機関に送った抗ウイルスワクチンの処方は、合成され感染者に投与された。すぐに効果が確認され、あっという間に世界中に広まった。
高調波を発進したために、以前のように人間は活発に活動も移動もあまりしなくなっていた。そのため、致命的なパンデミックが起きる前に、収束することができ、死者もそれ以来最小に、抑えることができた。
ワクチンの開発者に称賛の声が寄せされたが、同時に何人かが見出したことになっており、その実態はわからずじまいのように仕組んでいた。
僕は優しいおかあさんのことを時々思い出し、また会いたい気持ちがいっぱいとなった。
おとうさんも同じ。ボーッと過ごすことが多くなったが、おとうさんと眼を合わせるだけで、気持ちが分かり合えるようになった気がした。

(以降、1月28日掲載予定の第14回に続く)