●今月下旬に簡裁申し立てへ=受信料不払い「民事手続き」-NHK
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今月下旬に簡裁申し立てへ=受信料不払い「民事手続き」-NHK
NHKは2日、受信料不払い対策で、簡易裁判所を通じて支払いを督促する民事手続きを今月末に初めて行う方針を明らかにした。対象者が異議申し立てをしなければ強制執行も可能となり、事実上の受信料「強制徴収」が始まることになる。
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061102-00000076-jij-soci より
今回NHKがやろうとしている手続きは民事訴訟法第7編の「督促手続」というものである。
手続きの概要はこうである。
まず、NHKは簡易裁判所の書記官に対して「支払督促の申立て」をする。すると裁判所書記官は、要件が備わっているかどうかをチェックして問題がなければ「支払督促」を発してくれる(民訴法382条)。この「支払督促」は債務者(受信料を払っていない人)に送達される(民訴法388条1項)。
①債務者に支払督促が送達されてから2週間が経過すると、NHKは今度は裁判所書記官に対して支払督促に仮執行宣言を付けることを申し立てる(民訴法391条1項)。この場合も裁判所書記官は問題がなければ支払督促に仮執行宣言を付す。これを「仮執行宣言付支払督促」という。仮執行宣言付支払督促は債務者に送達される(391条2項)。
②債務者に送達されてからさらに2週間が経過すると仮執行宣言付支払督促は確定判決と同一の効力を有することになる(民訴法396条)。
この確定判決と同一の効力を有することになった仮執行宣言付支払督促によって、NHKは民事執行法の手続きに則って債務者に対して強制執行をすることができるようになる。強制執行というのは、要するに債務者の財産(土地・建物・車・・・)を強制的に売ってその売却代金から受信料を回収するということである。債務者が「うらないでぇ~」といっても駄目である。
では、債務者は黙って見ているしか手はないのか。そうではない。債務者にも防御の方法が用意されている。それが「督促異議」である。
まず、①のところで、債務者に支払督促が送達されたら、債務者は2週間以内に簡易裁判所に対して督促異議の申立てをする(386条2項)。これによって支払督促の効力を失わせることができる(390条)。
この後は、通常の裁判によってNHKと債務者が争うことになる(395条)。ここで債務者が負ければやはり受信料は支払わなければならない。
①のところで、督促異議をすることなく2週間が経過してしまった場合にはどうなるのであろうか。この場合には、②のところで督促異議が可能である。つまり、仮執行宣言付支払督促が送達されたら、債務者は簡易裁判所に対して督促異議を申し立てることができる。この場合も通常の裁判手続きでNHKと債務者が争うことになる。
しかし、①と②とでは、督促異議の効力に違いがある。①のところで督促異議を行えば、支払督促を失効させることができるが、②では失効させることができない。したがって、②のところで督促異議をする場合には、同時に民訴法403条1項3号に基づく執行停止の裁判の申立てを行う必要がある。手続きがめんどくさくなるわけだ。したがって、債務者は早めに督促異議を申し立てたほうがよい。
NHKが何人に対して支払督促をしようとしているのか知らないが、数百人の債務者に対して支払督促を行うと、下手をすれば、数百の裁判を抱えることになる。これは大変だ。だから、NHKは一部の者に対して支払督促をして債権を回収し、これをちらつかせて他の債務者からも受信料を回収しようとしているのであろう。