●手術拒否で親権停止 容態悪化の赤ちゃん 病院→児相→裁判所、スピード判断 | ニュースで法学

●手術拒否で親権停止 容態悪化の赤ちゃん 病院→児相→裁判所、スピード判断

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手術拒否で親権停止 容態悪化の赤ちゃん 病院→児相→裁判所、スピード判断

 生まれつき脳の病気がある赤ちゃんに必要な手術を両親が拒否したため、病院が児童相談所に「虐待通告」をし、児童相談所の請求を受けた大阪家裁が昨年「子の健全な発達を妨げ、生命に危険を生じさせる可能性が極めて高い」として親権停止の保全処分を命じていたことが21日、分かった。

 手術は同家裁が選任した親権代行者の同意で無事行われ、赤ちゃんはその後、両親の元で順調に育っているという。

 この両親は「宗教的な理由」で手術を拒否したが、宗教以外にも重い障害があるなどさまざまな理由で親が子供の治療を拒否する例がある。病院と児童相談所が連携して裁判所の判断を仰ぎ、治療に結び付けたケースとして注目される。

 関係者によると、赤ちゃんは昨年、関西地方の病院で生まれたが脳の病気で容体が悪化。主治医は再三にわたって手術を勧めたが、両親は「神様にお借りした体にメスを入れることはできない」と拒み続けた。

 赤ちゃんを連れ帰ろうとする様子も見せたため、病院が「手術を受けさせないのはネグレクト(養育放棄)に当たる」と児童相談所に通告。相談所も「親権の乱用だ」として、両親の親権喪失宣告と、緊急措置として親権者の職務執行停止(親権停止)の保全処分を大阪家裁に請求した。

 子供の治療には親の同意が必要で、通常親が反対すれば手術に踏み切ることはできないとされる。大阪家裁は、ほかに適切な治療手段がないことや、手術しなければ重い障害が残ったり生命に危険が及んだりする可能性を検討。「生命の安全や健全な発達のためには早期に手術をする必要がある」として、親の意思より子供の福祉を優先すべきだとの判断を示した。

 請求から約1週間で、親権停止としては異例のスピード。関係者は「手術を受けても育てていく姿勢を両親が示したため、判断しやすい面があったのではないか」としている。

 病院の主治医は「自分が手を離せば赤ちゃんの運命が決まってしまう。助かる命を前に、手を出すのが医療者の責務だと思った」としている。

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【用語解説】親権

 未成年の子供に対し父母が行使すると民法で規定される権限。監護・教育の権利と義務、居住指定権、懲戒権、職業許可権、財産管理権などで構成される。乱用に対しては喪失宣告を家庭裁判所に請求でき、親族や検察官のほか、児童福祉法に基づき児童相談所所長も請求人になれる。虐待などで緊急に子供の安全確保を図る必要がある場合、審判前の保全処分を求めることができる。

(産経新聞) - 10月22日8時1分更新

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061022-00000011-san-soci より