●承諾殺人の夫に猶予判決 奈良地裁支部
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承諾殺人の夫に猶予判決 奈良地裁支部
奈良県香芝市の山林で7月、病弱な妻=当時(67)=との将来を悲観し、妻の承諾を得て絞殺したとして、承諾殺人罪に問われた住所不定、無職、河内武登志被告(68)に対する判決公判が16日、奈良地裁葛城支部で開かれた。
榎本巧裁判官は「殺害以外の方法があったと思われ、決して認めることはできない」としたが、「妻は被告人を刑務所に入れることを望んでいないだろうし、被告人も反省している」として、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役5年)を言い渡した。
判決によると、河内被告は、精神疾患などを患う妻との心中を決意し、7月19日午後4時ごろ、同市畑の山林で妻の首をひもで絞めて殺害。自身も自殺しようとしたが死にきれなかった。
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061016-00000015-san-soci より
承諾殺人罪は人の承諾を受けて、これを殺害することをいい、刑法202条後段に規定がある。法定刑は通常の殺人罪が「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」となっているのに対して、承諾殺人罪は「6月以上7年以下の懲役又は禁固」と、かなり軽くなっている。このように刑法が承諾殺人について刑を軽くしているのは、被害者の承諾を得てこれを殺す行為は、被害者自身の生命に対する法益の法規を前提としてなされるものであるから、通常の殺人罪よりも違法性の程度が軽く、また、行為者の責任も減軽されうるからである。
さて、記事によれば、被害者である妻は精神疾患などを患っていたという。承諾殺人にいう「承諾」とは、通常の事理弁識能力を有する被害者である人の自由且つ真意にでたものでなければならないとされている。つまり、幼児や精神病者など「生命の放棄・死」の意味を理解することのできない者の承諾は刑法202条にいう「承諾」には含まれない。
では、記事中の妻にそのような事理弁識能力は備わっていたのだろうか。これは裁判所がどのような事実認定を行ったかとも関連するので一概には言えないが、妻の精神疾患の程度が軽ければ刑法202条の「承諾」として問題ないというべきだろう。