近所の人達に、悪いレッテルを貼られた私は、公園へ行ってママ友達との親交を深め、
積極的に育児サークルや様々な活動に参加して近所以外の人たちと交流を深めていった。

公園ママというと、近頃のドラマの影響で、口さがないヒマな主婦達のたまり場のような印象を受ける。
たしかに、変な人もいるけれど、それは会社でもどこでも同じ。ほとんどの人たちはまともである。
むしろ異業種交流といったほうが近い。育児という未知の世界で
様々な生き方、考え方、ネットワーク、全てが私のキャリアに大きな影響を及ぼした。
だから、近所との交流は全くなくなっていたが気にならなかった。

秋近くなったころ、公園でおかしな一家がいるという噂が囁かれだした。
繁華街近くの治安の悪いこの地域では未就園児が1人で歩くことは無いというのに、
未就園児だけで遠くから公園に遊びにくる。
公園の水道を大量に使い、遊んでいた子供たち全員をびしょ濡れにさせる。
母親が来てもタバコを吸っている。いけないことをしても全く注意しない。
体格はとてもいいのに自分はガンだとか、子供も病気だとか。
小学校から深夜に一家の子供が来ていないか問合せがあったとか。

ママ友からママ友へ爆裂に噂は広がり、私のところへもママ友から確認の連絡がきた。
面白がって、その一家に近づいて状況報告する人も現れた。


ある日、近くの集合住宅に住んでいる人が訪ねてきた。その人は一家と仲よしだった人だった。
私は限りなく警戒しながら応対すると、その人は思ってもいなかった話をしだした。

あの家になにかされなかったか?と。もしされたのなら一緒に裁判をおこしたいと。
唖然として話を聞くと、そこの家が外で飼っていた犬のことから話し始めた。
来た当初からずっと鳴きっぱなしだった犬は、実は拾われてから一度もご飯を与えられたことがなくて、
近所の人たちが交代でご飯を与えて散歩させていた事。
そのうち何度も一家にお金を貸したけど一度も返してくれなくなり、怒って犬の世話をしなくなり、
病気になっても病院に連れていかず、冬のとても寒い日に犬が死んだ事。どこかに捨ててきたこと。

そして、色々話を丸め込んではお金を借りていったが返してくれないこと。

さらに詳しく話を聞くと、あの一家は典型的な育児放棄だったことが分かった。
以下↓ウィキペディアより引用
充分な食事を与えない。下着など不潔なまま放置する。
幼稚園、保育園、保育所に預けない。子供の希望にもかかわらず、学校に通わせない。
病気になっても病院に受診させない。防寒に充分な着衣を着けさせず、寒冷な外気に晒す。
暑い日差しの中、駐車場の車内への放置。または、パチンコなどの娯楽に興じ、育児を放棄する。

全て当てはまっていたそうな。

あの耳障りな子供たちの声は、子供たちが発する命の危険信号だったのだ。
あの自動販売機は子供たちの一日の食事だったのだ。
ずっと子犬だと思っていた犬は実は痩せた成犬だったのだ。

恐ろしすぎて眠れなかった。

地域の人たちは、私に悪いレッテルを貼った後、しばらくしておかしいことに気づいたらしい。
ここへきて状況はさらに悪化していく。

ママはガタイがいいのに、子供達はガリガリ。
洋服がいつも同じ、上着をきていない。ボロボロ。
虫歯だらけで歯がなくてヨダレを垂らしている。
ありえない場所に子供がいる

噂が広がって、公園に居づらくなったのか、もう詐欺れる相手がいないと思ったのか
冬になるころ、その一家は公園まで行くことをやめて、また道路で騒ぎ始めた。

しばらく静かだなと思ってたころ、突然、母親と長男だけが家を出て行った。
代わりに、祖父母と消えた子供のうち1人が戻ってきた。