かつて通いなれた病院のドアを開けた日
帰りには私の手元にはたくさんの薬があった
かつての そして改めて私の主治医となった医者は
こともなげにこう言ったのだ
「以前より病状が悪化してるね~」
私はそうは思わなかった
少なくとも頭痛に関して言うのならば
悪化したのではない
幼いころから頭痛持ち
思い起こせば何年かに一度
こんなふうにひどくなっていたのだ
つまり 悪くなったわけではなく
「よくなっていない」のだ
この二つの差は私にはとても大きい気がした
けれど 医者は
そんな言葉遊びには頓着しないようで
ただひたすらに
「薬をきちんと飲みなさい」
そればかりを繰り返すのだった
何故ならこの頭痛は
すべて私の過大な緊張とストレスの産物なのだから
それが彼 即ち医者の言い分なのだ
薬を飲み始めてしばらくたったある夜
「それ」は テロリストのように突然私を襲った
突拍子もなく 前触れもなく
私のココロに焼け火箸が当てられたような
鋭い一撃が走った
それは激しい死への渇望
その日から 私は一日のうち大半を
自分を傷つけようとする衝動との戦いで過ごすようになっていった
(これは 普通 じゃない)
荒れ狂う感情の中で
一点冷えた私の理性がそう考えていた
そのときの私にはいくら考えても
死にたくなる理由が思い当たらなかったのである
本当にありがたいことに
皆様に可愛がっていただいたおかげで
セッション会は順調に進んでいたし
殆ど毎日遠隔セッションもさせていただいていた
それまで理解を持たなかった私の家族も
応援をしてくれるようになっていたし
私は「自分を生きている」という実感に満ちていた
頭痛は私を苦しめはしたが
そのことはいつかどうにかなるだろうと思っていたのだ
いくら考えても
何故自分がこんな感情に支配されているのか
私には理解ができなかった
理解ができない故に 原因を取り除くこともできず
ただ いつも胃の腑がひっくり返るような
一瞬たりとも目を閉じられないような
神経がささくれだった状態の中で
あいも変らない頭痛に苦しめられ
私はきっと疲れていったのだろうと思う
そして おかしいと思いながら
私は医者という
国家権力に認定を受けている存在の言うコトのほうが
きっと私の考えより正しいのだろうと
なにより私はただの素人なのだもの と
彼の言いなりになってしまったのだった
「私 くすりを飲み始めてからおかしいんです」
そう訴える私へ
より強く より多く
投薬は続けられた
そうして私は
全身がぱんぱんに浮腫み
口元の筋肉は弛緩し
ロレツが回らなくなり
まともに歩くことすらできなくなっていく
何かを食べても味は殆どしなかった
自分が満腹なのか空腹なのかもわからなかった
なによりただひたすらに眠くて
殆どの時間をねむってすごしているうちに
その日がいつなのか
今が何時なのか もう理解できなくなっていた
目が覚めると
全身が痣だらけになっていることもしょっちゅうで
ある時など 脚が切れて出血していたこともあった
もちろん何かをした記憶はまったくありはしない
携帯には自分が打った記憶のない送信が残り
かけた覚えのない通信履歴があった
どんどんと
テレビもパソコンも本も
すべてがただ 苦しくてたまらず
目が覚めることが苦痛でしかなく
夢もみない暗黒の眠りだけが
私のワンダーランドへと成りえたのである
しかし そんな中でも
実は 私は
何人かと対面のセッションをしていた
『仕事』になると私は
まるで人が変ったかのように
いつものセッションを難なくこなしていたのである
仕事を終えて家に帰った私が
医師の指示どおり薬を飲み
家の廊下で転び
倒れたまま翌日までいたなど
誰が想像できただろう
(眠っていたい・・・)
効き目が強くなるように
アルコールで薬を流し込み
ひきっぱなしの布団へと倒れこむ
私は完全な薬物中毒に陥っていた
・・・・・・・・・・・<続く>
帰りには私の手元にはたくさんの薬があった
かつての そして改めて私の主治医となった医者は
こともなげにこう言ったのだ
「以前より病状が悪化してるね~」
私はそうは思わなかった
少なくとも頭痛に関して言うのならば
悪化したのではない
幼いころから頭痛持ち
思い起こせば何年かに一度
こんなふうにひどくなっていたのだ
つまり 悪くなったわけではなく
「よくなっていない」のだ
この二つの差は私にはとても大きい気がした
けれど 医者は
そんな言葉遊びには頓着しないようで
ただひたすらに
「薬をきちんと飲みなさい」
そればかりを繰り返すのだった
何故ならこの頭痛は
すべて私の過大な緊張とストレスの産物なのだから
それが彼 即ち医者の言い分なのだ
薬を飲み始めてしばらくたったある夜
「それ」は テロリストのように突然私を襲った
突拍子もなく 前触れもなく
私のココロに焼け火箸が当てられたような
鋭い一撃が走った
それは激しい死への渇望
その日から 私は一日のうち大半を
自分を傷つけようとする衝動との戦いで過ごすようになっていった
(これは 普通 じゃない)
荒れ狂う感情の中で
一点冷えた私の理性がそう考えていた
そのときの私にはいくら考えても
死にたくなる理由が思い当たらなかったのである
本当にありがたいことに
皆様に可愛がっていただいたおかげで
セッション会は順調に進んでいたし
殆ど毎日遠隔セッションもさせていただいていた
それまで理解を持たなかった私の家族も
応援をしてくれるようになっていたし
私は「自分を生きている」という実感に満ちていた
頭痛は私を苦しめはしたが
そのことはいつかどうにかなるだろうと思っていたのだ
いくら考えても
何故自分がこんな感情に支配されているのか
私には理解ができなかった
理解ができない故に 原因を取り除くこともできず
ただ いつも胃の腑がひっくり返るような
一瞬たりとも目を閉じられないような
神経がささくれだった状態の中で
あいも変らない頭痛に苦しめられ
私はきっと疲れていったのだろうと思う
そして おかしいと思いながら
私は医者という
国家権力に認定を受けている存在の言うコトのほうが
きっと私の考えより正しいのだろうと
なにより私はただの素人なのだもの と
彼の言いなりになってしまったのだった
「私 くすりを飲み始めてからおかしいんです」
そう訴える私へ
より強く より多く
投薬は続けられた
そうして私は
全身がぱんぱんに浮腫み
口元の筋肉は弛緩し
ロレツが回らなくなり
まともに歩くことすらできなくなっていく
何かを食べても味は殆どしなかった
自分が満腹なのか空腹なのかもわからなかった
なによりただひたすらに眠くて
殆どの時間をねむってすごしているうちに
その日がいつなのか
今が何時なのか もう理解できなくなっていた
目が覚めると
全身が痣だらけになっていることもしょっちゅうで
ある時など 脚が切れて出血していたこともあった
もちろん何かをした記憶はまったくありはしない
携帯には自分が打った記憶のない送信が残り
かけた覚えのない通信履歴があった
どんどんと
テレビもパソコンも本も
すべてがただ 苦しくてたまらず
目が覚めることが苦痛でしかなく
夢もみない暗黒の眠りだけが
私のワンダーランドへと成りえたのである
しかし そんな中でも
実は 私は
何人かと対面のセッションをしていた
『仕事』になると私は
まるで人が変ったかのように
いつものセッションを難なくこなしていたのである
仕事を終えて家に帰った私が
医師の指示どおり薬を飲み
家の廊下で転び
倒れたまま翌日までいたなど
誰が想像できただろう
(眠っていたい・・・)
効き目が強くなるように
アルコールで薬を流し込み
ひきっぱなしの布団へと倒れこむ
私は完全な薬物中毒に陥っていた
・・・・・・・・・・・<続く>