ガンダーラ美術と仏伝 ② 誕生
 
「ガンダーラ美術と仏伝」に所載される作品のなかから、弊店で扱った思い出深い作品を、幾つか選んで数回に分けてご紹介させていただきます。
 
「ガンダーラ美術と仏伝」 藤代一嘉 著 
47ページ「誕生」ガンダーラ 片岩 2〜3世紀 について
 
釈尊は約2500年前、ネパール南部、タライの農村ルンピニーで誕生したとされます。
 
母マーヤは月満ちて出産の時を迎え、シュッドーダナ王と共に里帰りする旅の途中、木々の茂る心癒しき森、清水湧き出るルンピニーの園で身体を休めました。
 
マーヤ夫人は無憂樹の美しい花を見て、その枝を取ろうと右手を伸ばしたとたん突然産気をもよおし、何の苦痛もなく立ったままで、右脇より黄金のように輝いて芳しい香りに包まれた汚れの無い玉のような王子(釈尊)を生んだとされます。
 
この作品は、釈尊誕生の場面をあらわしたガンダーラ仏伝のレリーフで、古美術雑誌へ掲載した、弊店のこの作品(誕生)の広告から、初めてご来店いただきご購入いただいた作品で、藤代(伯林寺)コレクションのガンダーラ作品収集の第一号最初の作品でした。
 
そして書籍「ガンダーラ美術と仏伝」もこの作品から誕生し、また、奇しくもこの作品は美術商を職業とする以前、私自身もガンダーラ美術に初めてふれ購入した作品でありました。
 
この作品との出会いが無ければ私自身美術商にはなっていなかったと言っても過言ではなく、まさに様々なものを生み出した、仏陀の生涯をテーマとしたガンダーラ仏伝の思い出深い作品「誕生」です。