毎日連載小説「2月14日の嘘」 第153話 〜ダメ男、名古屋に向かう〜
一時間後。
あっさりと解放された僕は、200万円と共に名古屋行きの新幹線に乗っていた。
回収できたのは嬉しいが、さらに面倒臭い事態に陥ってしまった。
ただ、そのことは告げずに梶谷ひばりにメールで報告した。
《やったじゃん! 次もよろしく(^o^)/》
軽い。存在が耐えられないほど軽い。
《次は名古屋に行く》
と、メールしてからスマホを見ていない。
「お腹空いた」
隣の席に座る松崎美樹が口を尖らせた。
「名古屋に着いたら何か食べよう」
「やっぱり、駅弁を買えばよかった」
「あと、もう少しの辛抱だ」
「さっきからそればっかり」
「……すまん」
なぜ、こっちがあやまらなければいけないのだ。
さすがに、松崎美樹はチアリーダーの格好はしていない。やたらに南国風のワンピース姿で、どこかのリゾート地にでも行くかのようだ。
彼女は、僕の見張り役としてついてきている。
200万円を立て替えたスナックのオーナーの条件は、名古屋と新潟の女の借金をさらに請け負うことだった。