毎日連載小説「2月14日の嘘」 第141話 〜ダメ男、探る〜 | 木下半太オフィシャルブログ「どんなときも、ロマンチックに生きろ」Powered by Ameba

毎日連載小説「2月14日の嘘」 第141話 〜ダメ男、探る〜

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  問題はどこに松崎美樹が隠れているかだ。
  しかし、驚くべきことにその場所もひばりは絞り込んでいた。
  久留米ラーメン店が一階にあるマンション。
  どうやら、そこに松崎美樹が住んでいるらしい。ネットで調べたところ、熱海には久留米ラーメンを提供する店は一軒しかなかった。
  ひばりは、なぜ、そこまでわかるのだ?
  まったく理解できない。本人は、「松崎美樹が使った諭吉に訊いただけやで」と言い張るばかりだ。
  そんな不確かな情報で熱海までやって来た僕もどうかしてる。
  もし、ひばりの言うとおりに松崎美樹が見つかれば……。信じたくないが、ひばりに何らかの能力があると認めざるを得ない。
  久留米ラーメンの店は、熱海駅から少し離れていたのでタクシーに乗った。飲食店や飲み屋が固まっているのは駅前ではないのだ。
  店は評判みたいで、店の名前をタクシーの運転手に告げるとカーナビを使わずに向かってくれた。
  タクシーを降りて、ラーメン店に近づくとランチ営業の準備中だった。豚骨の香りが表通りまで漂っている。
  さて、どうやってマンションに入り、松崎美樹の部屋を見つけるかだ。
  念のため、髭を剃ってスーツを着てきた。普段よりはまともな人間に見えるはずだ。久しぶりのスーツはクソ暑いが我慢するしかない。
  まずはラーメン店の横のマンションのエントラスをチェックする。
  ラッキーだ。オートロックではない。
  まあ、借金をして逃亡している身なのだから、そこまでいいマンションには住めないのだろう。
  次にポストを見た。残念ながら松崎という名前はない。
  これは予想通りだ。
  マンションは三階建てで、ワンフロアにつき、五部屋ある。一階はラーメン店なので、住人の数は十世帯だ。
  僕は周りを見回し、マンションの中に入った。