毎日連載小説「2月14日の嘘」 第139話 〜ダメ男、割り切る〜 | 木下半太オフィシャルブログ「どんなときも、ロマンチックに生きろ」Powered by Ameba

毎日連載小説「2月14日の嘘」 第139話 〜ダメ男、割り切る〜


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「三人の女の居場所を教えてくれ」
  僕はひばりに訊いた。
「熱海、名古屋、新潟」
「遠いな……」
  どうりで見つからないはずだ。彼女たちの地元なのだろうか。
「二日しかないねんから、すぐにでも動いてや」
  ひばりがお役ご免とばかりにコキコキと首を鳴らす。
「熱海と名古屋と、あとはどこだっけ?」
「新潟よ」
「三つとも行ったことないんだが……」
  正直、旅行は苦手だ。観光地で、暇を持て余した定年後の老人に紛れるなら、近所の行きつけのバーで酔っ払う。
「よかったやん。新しい土地でリフレッシュできるやん」
「一緒に来てくれないのか」
「なんで、ウチがアンタと旅行せなあかんのよ」
「一人は寂しいだろ」
  あと、土地勘がないのが不安だ。
「作家先生やねんから、ついてきてくれる女の子ぐらいおるやろ」
  いないわけではないが、今は杏しか考えられない。
  ……待てよ。杏と熱海、名古屋、金沢と行けたら最高ではないか。
  これは日帰り旅行の下見だと割り切ればいいのだ。
「わかった。明日の朝イチで出発する 」
  僕は声高々に宣言した。
「急にテンション上げんとってキモいから」
  ひばりがしかめ面で言った。