毎日連載小説「2月14日の嘘」 第125話 〜ダメ男、頼む〜
梅雨に入り、鬱陶しい天気が続いている。
今日も雨だ。僕はコンビニで買った五百円のビニール傘を手に夕方の歌舞伎町を歩いていた。
史上最悪にカッコ悪いデートから、十日間が過ぎた。腰はもう大丈夫だ。
しかし、あれ以来、なんとなく気まずくて杏とのLINEは挨拶程度だけだった。
相変わらず執筆が進まない僕は、ホストクラブから“掛け飛び”した女たちを探すアルバイトで時間を潰していた。
正直、見つかるわけがない。
一応、逃げた女たちが働いていた店や、通っていた他のホストクラブで聞き込みをしたが、いきなり現れた中年の男に誰も本当のことを話ししてくれるわけがない。
背に腹はかえられない。今日はある決心をして、歌舞伎町に来た。「久しぶりやね」
映画館の前で、梶谷ひばりが待っていた。ひまわりの柄の傘を差している。
「忙しいところ、時間を作って貰ってすまない」
「それ、嫌味なん? こっちに来たばかりで暇やってば」
「仕事を頼みたい」
「唐突やね」
「人探しを手伝って欲しいんだ」
「立ち話もなんやし、お茶でもしよ」
近くの喫茶店に移動して、僕はひばりにアルバイトの件を手短に話した。
「回収額の10%%安すぎやろ」
ひばりがアイスコーヒーを飲みながら顔をしかめる。
「まあ、アルバイトだからな」
「そのホストクラブの店長に会わせてや」
「どうして?」
「50%にするように、ウチが交渉するわ」