毎日連載小説「2月14日の嘘」 第124話 〜ダメ男、無抵抗〜 | 木下半太オフィシャルブログ「どんなときも、ロマンチックに生きろ」Powered by Ameba

毎日連載小説「2月14日の嘘」 第124話 〜ダメ男、無抵抗〜

{864A4E51-7796-4BFC-B80E-3B5DFA147868}
  全身に電流が走った。
  突然のことで、杏の手が暖かいのか冷たいのかもわからない。こっちの手が震えないようにするので必死だ。
  こんな形で杏と手を繋げるとは思わなかったが、ラッキーに乗っかろう。
  杏は不安げな目で俺を見ている。
  当然だ。腰が抜けたおじさんほど情けないものはない。
「立ち上がるから、ゆっくりと手を引いてくれ」
  杏がコクリと頷き、僕を立たせようとした。
  ……ダメだ。下半身がまったく言うことを聞いてくれない。
「大丈夫っすか?」
  見るに見かねた細マッチョ野郎たちが近づいてきた。
「だ、大丈夫です」
「救急車、呼びましたから」
「えっ?」
  おい! 勝手に呼ぶんじゃない!
  杏が僕の手を離し、「ありがとうございます」と言うように、ペコリと頭を下げた。
  細マッチョ野郎たちのお節介のせいで、幸せな時間はあっという間に終わってしまった。
「表まで運びます」
  マッチョ野郎たちの中でも、一番ガタいのいい男が僕を持ち上げた。
「いや……ちょっと……」
  抵抗しようとしても、腰に力が入らないのでどうしようもない。
「杏……また連絡するよ」
  細マッチョにお姫様抱っこをされて、二回目のデートが強制終了した。