毎日連載小説「2月14日の嘘」 第112話 〜ダメ男、怖がる〜 | 木下半太オフィシャルブログ「どんなときも、ロマンチックに生きろ」Powered by Ameba

毎日連載小説「2月14日の嘘」 第112話 〜ダメ男、怖がる〜

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「彼女は会話をしないように自分で決めたんだよ」
「何で、そんなことしてるん?」
「理由はあるんだろうけど、まだ教えてもらっていない」
「ふうん。変わった子やねえ」
  ひばりが首を傾げる。
  君には言われたくないだろう。
「なぜ、杏が鯉川の店に行ったんだ?」
「占いが好きなんちゃうの」
「だとしても、偶然過ぎるだろ」
  嫌な汗がじっとりと背中から滲み出す。
  鯉川は僕の元妻と同棲し、僕が片想いをしている相手とも繋がった。確率で考えたら、ありえない。
  あの男は、一体、何者なんだ?
「じゃあ、次は杏ちゃんの財布からお金を持ってきて」
  ひばりが、あっけらかんと言った。
「おい、いい加減にしろ」
「鯉川との関係が気にならへんの?  ただの占いのお客さんって確認したいやろ」
「まあな……」
「じゃあ、頑張ってな」
  ひばりがニッコリと笑う。
  可愛い顔をして強引だ。これだから、女は怖い。