毎日連載小説「2月14日の嘘」 第45話 〜ダメ男、すがる〜 | 木下半太オフィシャルブログ「どんなときも、ロマンチックに生きろ」Powered by Ameba

毎日連載小説「2月14日の嘘」 第45話 〜ダメ男、すがる〜


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「草野球チームとかには入っていないのか」
  僕は、すがるような気持ちで梶谷に訊いた。
『昔は出版社のチームがありましたけど、メンバーが集まらなくて解散しましたね』
「ちくしょう! もう一度、作り直せないか?」
『無茶ばっかり言わんとってください。また、龍之介君から課題を出されたんですか』
  梶谷が迷惑そうに言った。感情がすぐに態度に出るのは編集者には向いていないが、僕は梶谷のそんなところが気に入っていた。
「そうなんだよ。四月中に何でもいいからスポーツチームに入って、試合に参加しろだと参加」
『あの少年は何をしたいんですかね』
「こっちが訊きたいよ」
『ネットで探してみたらどうですか?  スポーツチームのメンバー募集の掲示板とかあると思いますよ』
「無理だ。ネットが蕁麻疹が出るほど苦手なのは知ってるだろ」
『わかりましたよ』梶谷が軽いため息をつく。『俺が探してみます』
『その代わり、小説を書いてくださいね』
「この恋に決着がつけば書く」
『絶対ですからね!』
「切るぞ」
  ホテルのデスクの前に鏡がある。そこに映る自分と目が合った。泣きたくなるぐらい情けない顔をしている。