毎日連載小説「2月14日の嘘」 第44話 〜ダメ男、憂鬱になる〜
『まあ、頑張って。今日から始めてもらうからね』
龍之介が有無を言わせない口調になる。
「おい、待て。急に言われても困るぞ。何を始めればいいんだ?」
『そんなの自分で考えなよ。課題の期限は四月の末までね』
「とりあえず、どこかのスポーツチームに入ればいいんだな」
『ただ入るだけじゃ意味がないじゃん。ちゃんと試合に参加しなきゃ』
「嘘だろ……」
目眩がする。どれだけ、このガキに振り回されなければいかないのか。
『まずはチームに入ったら連絡してよ。じゃあね』
そう言って、龍之介が一方的に電話を切った。
シャレにならない展開になってきた。雨で憂鬱だった気分がさらに倍増する。
スポーツチーム?
自分が和気あいあいと団体競技をしている姿をまったく想像できない。
困ったときの担当編集だ。僕はすぐさま梶谷に電話をかけた。
『先生、おはようございます。妹が何かご迷惑をおかけしましたか?』
「亜紀ちゃんはうまくやってくれてるよ」
『よかった。朝に先生から電話があるのは珍しいんで何かあったんかと思いました』
「頼む。スポーツチームを紹介してくれ」
『はい?』
梶谷が素っ頓狂な声を出した。