毎日連載小説「2月14日の嘘」 第31話 〜ダメ男、恋愛相談する〜 | 木下半太オフィシャルブログ「どんなときも、ロマンチックに生きろ」Powered by Ameba

毎日連載小説「2月14日の嘘」 第31話 〜ダメ男、恋愛相談する〜

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「恋? 何やの、それ」
  亜紀がクスリと笑う。
「君には関係ないだろう」
  美人に笑われるのは嫌いではないが、この女には僕をイラつかせるものがある。会って間もないのに、見下されている気分になるのだ。
「恋した相手を落とせないわけやね」
「一筋縄ではいかない恋なんだよ」
「百戦錬磨の先生が片思いなんて珍しいですよね」
  浮かれたマスターが、ペロリと喋る。
  調子に乗るなと目で合図したいが、マスターは亜紀の胸の谷間に夢中になっているので視線を送ることができない。
「是非とも聞きたいわ」
  亜紀が前のめりになる。面倒だが、イチから説明しなくてはならない。
  僕はクラフトビールを飲み干し、なるべく話をかいつまんで、二人にここ最近の状況を語った。
「アイドルのスカウトなんて簡単やん」
  話を聞き終えた亜紀が、事も無げに言った。
「やったことがないから、そう言えるんだよ」
「ウチのアドバイス通りにやれば、三十分で成功するで。なんなら、今から行こうか」
「……本気か?」
「アドバイス料は別払いやで」
  いきなり、亜紀が自分の金髪をむしり取った。マスターが驚いてカウンターの中で仰け反る。
  金髪はカツラだった。
「な、なんでそんなもの被ってるんだ?」
「原宿に行きながら教えたげる」
  亜紀がまとめていた髪を解きながら言った。
  とてつもなく美しい、ロングの黒髪だった。