大人の引きこもり・子供の不登校相談https://r.goope.jp/kubo-counseling/ -16ページ目

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橋を渡りきると、丘が見えてきた。


遊歩道を回りながら丘を登っていく。


「優太、丘のてっぺんまで行って」



これ以上高く登るには、遊歩道を外れなくてはならない。


川上優太は、獣道に車いすを滑らせていった。



丘の頂上まで来ると、道子が叫んだ。



「さぁ優太、ラストフライトするよ 」

  


「なんだよラストフライトって 笑」

 

  

道子は、風を待っていた。


「飛ばさないの?」  


「まだよ 」 


工藤道子は真剣な顔をしていた。


目を閉じて、風を感じている。もう二分以上が経過した。


こんなに風を待っている道子は初めてだった。


「いまだっ」 


道子が叫んだ。


「バイバイ 私の飛行機」 


そう言って道子はライトプレーンを上空へ舞い上がらせた。


ライトプレーンは今までみたことのない動きをしながら、飛び始めた。


一旦急上昇をはじめ、大きく左に旋回した。


あのライトプレーンに人が乗れるなら、下方に小川が見える。


ライトプレーンは川沿いを進み、今度は右に旋回を始めた。


こんなに長時間飛んでいたのは初めてだった。


その時、道子が言った。


「優太、飛行機を追いかけて」 


「えっ 取ってきて欲しいの?」 

 

「いいから追いかけて」  

 

「わかった」  


川上優太は飛行機の後を追った。


川を離れて右に旋回する飛行機は、どこまで飛ぶのか。


優太は走り続けた。


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十分以上も飛び続けた飛行機が、丘を旋回して降りてくる気配を見せた。


このままだと森へ落ちるな


優太は直観した。


その先には、航空公園の象徴のような、大木がある。


しばらく追いかけると、やはりライトプレーンは大木へ向かった。


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そして静かにランディングしたのだった。


川上優太は、大木を目掛けて、走り続けた。

そして、道子の方を見ながら叫んだ。


「あの大木に落ちるぞー」



すると、道子は見えなくなっていた。


大きく旋回しながら飛行したライトプレーンは、道子のいる丘からはもう見えないのだ。


「はぁはぁ」



川上優太はやっとのことで、大木の下へたどり着いた。


そしてライトプレーンに手をかけた。



すると、大木の影に人の気配を感じる。


飛行機を拾いながら、覗き込んでみると・・



そこには、女がいた。



「優くん」



「ひなた・・」



斉藤ひなたが、そこにいた。





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https://www.youtube.com/watch?v=2nngtOHxO58


椎名恵さんの【愛は眠らない】

このシーンにぴったりかな