俺とジャンはモンター・ニュ・ドゥ・ラ・クール街近辺の商店で集まった青年会の一員で、その青年会の中でも十代の若者たちだけで時々集まっては、情報交換という無駄話を酒場で時々繰り広げていた。
メンバーは8人ほどなのだが、何回か呑みあっているうちに気心も知れてきた。
「今日はみんな集まってくれてありがとう」
「なんだよ、大人になった報告か。そんなことで呼び出すなよな」
ジャンから昨日のことを聞いたのだろう。ブノワ・ポールヴールドがニヤニヤしながら言う。
「まじめな話だ。今日は茶化すなよ。最後まで俺の話を聞け」
俺が真剣な顔をするとみんなはシーンとなった。しかし、直ぐ後に大爆笑。
「何がまじめな話だ。前もそう言って『チンチンの法則』とか言って、十代のときの角度、二十代のときの角度、三十代のときの角度と言う風に腕を使って説明したじゃないか」
これはシュミットさんの冗談をそのまま流用した話だ。牧師の家で育ったので、猥褻な話には逆に飢えているのかもしれない。
「まあ、それはそれだ。今日は本当にまじめな話なんだ……みんなで会社を作らないか」
大笑いが収まる頃にそう言うと、集まったみんなは顔を見合わせた。
「何、馬鹿言ってんだよ。暇はない、金はないと言う俺たちが会社なんか作れるわけないだろう」
「初めからあきらめたら何もできないぞ。確かに現状は金もなければ時間もない。でも知恵はあるんだ。何もないところからアイデアを出せば何とかなるかも知れないだろう」
ブノワの否定的な言葉に俺は反論した。
「と言うか、テオ、会社作るって何の会社を作るんだ。中身を訊いてから、できるかどうか考えてみようじゃないか」
一番年上、と言っても18歳だが、ノエル・ゴディンが落ち着いた声で言う。相変わらず渋い声だ。
「将来的には色々なことをやりたいんだが、今、会社を作ってやりたいことは、コンドームを作る会社だ」