保護者からの声で

よく耳にするのが、

公立中学校の内申点(評定)に

関する不安だ。

 

かつての内申点制度と

現在のものは大きく異なり、

その違いを正確に理解することで、

受験への不安を軽減できる

 

2001年までの公立中学校は、

相対評価という評価の方法を

採用していた。

 

評定「5」の割合が全体の7%、

「4」が24%、

「3」が38%、

「2」が24%、

「1」が7%

 

と、評定が正規分布になるように

あらかじめ割合が

厳格に定められていた

 

この評価方法は、

学力レベルの高い中学校ほど

「5」が取りづらいという

問題点があった

 

2002年以降、

評価方法は大きく変わった。

 

相対的な評価から、

生徒一人ひとりの

到達度を重視する絶対評価へと

シフトしたのだ。

 

これにより、

各中学校は地域の学力の実情や

生徒の努力に応じて、

自由に評定をつけることが

可能となった

 

絶対評価への移行がもたらした

最も大きな変化は、

評定が「2」や「1」の

割合の低下だ

 

相対評価時代は

成績下位31%の生徒が

この評定に該当した。

 

現在は東京都の平均で

わずか15%程度しか

「2」や「1」の

評定の生徒はいない

 

さらに、

「4」や「5」の評定の割合は

大きく上昇している。

 

特に評定「5」の割合は

7%から約14%へと

倍増した

 

全体的に内申点の平均値が上がり、

「オール4」や「オール5」を

より多くの生徒が獲得している。

 

この状況を「内申インフレ」と

呼ばれることも多い

 

相対評価を受けた世代の

評定のイメージは

次のようなものだろう

 

5 → 優秀
4 → 少し優秀
3 → 普通
2 → 学力に不安あり

 

しかし、現在の評定のイメージは

次のようになる
 

5 → 優秀~少し優秀
4 → 普通
3 → 学力に不安あり
2 → 学力にかなり不安あり

 

内申インフレの影響で、

保護者と塾講師の間で、

評定の認識に溝ができている

 

内申インフレの恩恵は、

上位校を目指す受験生

が受けている。

 

高い評価を得る受験生が

増加したことで、

難関高校を目指す動機づけとなり、

より高い目標を持つ受験生が増えた。

 

難関高校を目指す

受験生にとっては

プラス要素になっている

 

しかし、この内申インフレは

塾側にとって、

必ずしも歓迎できるものではない

 

学力下位層の生徒とその保護者が、

危機感を抱きづらくなって

しまったからだ

 

現行の「オール3」は、

学力的には平均を下回る状況だ

 

ところが、保護者は

相対評価時代の

イメージがあるので、

真ん中ぐらいの学力はあるだろうと

錯覚してしまう

 

中学3年生で模試を受けて、

その現実を知り、

慌てふためくことになる場合もある

 

保護者がこんな噂話をすることがある

 

「A中学は内申点が取りづらいらしい」

「B中学は内申点が取りやすいと聞いた」

 

こうした内申点に関する

噂のほとんどが、

丹念に分析を進めると

的外れであることがわかる

 

実際に学校によって

「内申格差」はある

 

次の表は、文京区立のある中学校と、

都内のある

市立中学校の評定の分布図だ。

 

文京区は都内でもトップクラスの

高学力エリアで有名だ。

 

区立中学校全体の評定

「5」と「4」の割合は

48%にのぼる

 

つまり、

ほぼ2人に1人の評定が

「4」以上であるということだ

 

 

文京区立中学校は、

評定が甘い先生が

集まっているのだろうか。

 

そんなことはない。

 

学力の高い生徒が多いから、

評定が高くなるのだ

 

学校の先生は

エリアを超えて異動する。

 

中学校の評定は

9人の先生の平均値だ。

 

特定の中学に、

評定の甘い先生が

集まることはないだろう

 

評定平均の高い中学校は、

内申点が取りやすい

わけではない

 

学力の高い生徒が

集中するエリアの中学校で

あるということだ。

 

内申点に関する噂話には、

惑わされないように

気をつけたい

 

東京都内の全公立中学校の中で、

英語の評定「5」の割合が

最も高いある中学校がある。

 

この学校の

英語「5」の割合は34.4%。

つまり、

3人に1人以上が最高評価を

受けている。

 

これは東京都平均の

2倍以上の数字になる

 

この数字に不公平感を

抱くかもしれないが、

実はこの中学には、

帰国生の生徒が多かった

という事情があった。

 

英語の評定が高くなるのは

自然なことなのだ。

 

現在の絶対評価の制度では、

このようなことが起こる

 

都内で最も評定の平均値が

高い中学校がある

 

この中学の評定

「5」「4」の割合は57.4%で、

一見、データ上では

 

「都内で最も内申点が

取りやすい中学校」

 

ということになる。

 

いったいなぜか?
 

この学校の学区は

大型のファミリーマンションや、

整然とした新興住宅街が

広がるエリアだ

 

学区の推定世帯年収が

特に高いというデータもあり、

教育に高い関心のある家庭が

集まりやすいエリアだ。

 

中学受験率は高くなく、

難関都立高校に行く

ルートが確立している

 

学力の高いエリアの公立中は、

高い内申点が振り分けられている

 

これが絶対評価下の

評定分布の真実なのだ。

 

教育熱の高い小学生の保護者から

こんな不満を聞くことがあった

 

「うちの子はSAPIXのαクラスにいて、

模試ではいつも高偏差値なのに、

小学校の通知表では評価されない。

小学校の評価はおかしい」

 

気持ちはとてもよくわかるが、

小学校の評価は

学力偏差値とは異なる基準で

つけられることを

知っておく必要があるだろう

 

そもそも公立小学校には、

定期テストと呼ばれるような

試験がない

 

その代わり、

カラーテストと呼ばれる

単元ごとの確認テストがある。

 

このテストは、

特別な勉強をしなくても

きちんと授業を受けていれば

容易に高得点を取れるように

設計されている。

 

テストの点数で

大きな差のつく中学校とは

前提が異なるのだ

 

また、

公立小学校は担任の先生が

複数の科目を担当するので、

先生の主観が

評定に影響することは

否定できない

 

そもそも、

小学校の通知表は

入試利用を想定していない

 

そのため、中学校と比べて、

評価の客観性を担保する仕組みは

乏しいと言わざるを得ない

 

公立中学校は、

専門科目を担当する

9人の先生がそれぞれ評価をする。

 

算出される評定合計は

9人の先生の評価の

集合体になるので、

評価のブレは小さくなる

 

また、公立中学校の評定は

入試資料になるため、

客観性を担保する

仕組みがある。

 

都内の公立中学校では、

年度始めに

評価基準の詳細資料が配布され、

評価基準を全てオープンにしている。

 

また、自治体は特異な評定の分布に

なっていないのかのチェックをして、

ウェブサイトで公開している。

 

公立小学校の通知表と

公立中学校の通知表は、

客観性の担保という観点では

「別物」と捉えたほうが

良いだろう

 

公立中学校の内申点(評定)は、

表面上はシンプルな5段階評価

のように思えるが、

その背後には

詳細な評価基準が存在する

 

具体的には、

 

「知識・技能」

「思考・判断・表現」

「主体的に学習に取り組む態度」

 

という3つの観点が

各科目に設定されている。

 

これらの観点は

達成度に基づき、

東京都ではA・B・Cの

3段階で評価される

 

(神奈川県のように

5段階で評価する自治体もある)

 

・80%以上の達成度 ………………A
・50%以上~80%未満の達成度…B
・50%未満の達成度 …………… C

 

ほとんどの中学校では、

3つの観点をそれぞれ

100点満点で評価し、

その合計得点

(最大300点)に

基づいて5段階の評定がつく

 

・270点以上(90%以上)…5
・240点以上(80%以上)…4
・150点以上(50%以上)…3
・60点以上  (20%以上)…2
・60点未満  (20%未満)…1

 

評定のつき方には

注意点がある。

 

観点別評価は

80%以上の達成度で

「A」がつく。

 

しかし、評定の「5」は

全体の達成度90%以上が目安だ。

 

つまり、観点別評価「AAA」は、

評定が「4」になることも

「5」になることも

あるということだ

 

長女の場合

家庭科は壊滅的な

状況だった

 

ペーパー試験では

100点が取れるものの

エプロンの作成においては

刺繍が得意な伯母の助けを

借りたにも関わらず

誰が見ても

「これはなんですか?」

という状況だった

 

一方で娘のように

手先が器用ではないこの中には

「メルカリ」でお手製の

エプロンを買うという

「すごい発想の子もいた」

 

それでも最後の内申では

5をつけてくれた

 

頑張ったのに思うように

成績が取れていない場合は

先に述べた「観点別評価」について

再度確認してほしい

 

それでも良く分からない場合は

遠慮なく先生に聞くべきだ

 

(ただし、聞き方には

注意が必要だ)