突然だが、いまいち売れてない
お笑い芸人を思い浮かべてほしい。

特定の名前を挙げるのは
失礼なので、
皆さんとして
思い当たる人を
思い浮かべてほしい。

そして、なぜその人は
売れていないのかを
考えてみてほしい

おそらく皆さんは
「ネタがよくわからない」
というのを、
かなり重要な理由に
挙げるのではないだろうか。

イマイチだったドラマや
漫画を思い浮かべてほしい。


そして、

なぜイマイチだったのかを
分析してほしい。

皆さんは
「脚本の意図がよくわからなかった」
「キャラクタに感情移入できなかった」
「ストーリーが難しすぎた」
「設定が意味不明」

などの理由を
見いだすのではないだろうか。

 

世の中の「つまらない」の原因は、
もっぱら「わからない」なのだ。


脳が解釈可能であるから、面白い。

脳が解釈不能である事象に対して、
僕たちはポジティブな評価を
下すことができない。
 

昭和を代表する劇作家のひとり
井上ひさしは、
作品制作のポイントとして
以下のような言葉を残している。
 

“むずしいことをやさしく、
やさしいことをふかく、
ふかいことをおもしろく”

 

これは、ビジネス現場でも、
何も違わないはずだ。

この世界の経済活動のうちの、
20%までが
他人を説得する行為から

なっており、
それに長じる人が

ビジネスで成功する。

面白い漫才をできる人、
面白いドラマ脚本を書ける人、
部下に仕事の醍醐味を伝えられる人、
顧客に商品のよさを理解させられる人、
投資家に事業の可能性を伝えられる人。

どんなことでも

うまく説明できる能力は、
かくもさまざまなシーンで
自分を助けることになる。
 

しかし、残念ながら、
世の中のたいていのことは
「難しい」。

ビジネスの現場で、
部下に、クライアントに、
取引先に、投資家に対して、
あるいは家族に対して、
自分が伝えなければいけないことは、
複雑で、あいまいで、多義的で、
利害が入り交じった
「難しいこと」ばかりだ。

そんな難しいことを、
どう相手に話したものか、
僕も含め多くの人は
往々にして頭を抱えるはずだ。
 

そんな、難しいことを、
どう伝えるのか。

「ふかく、おもしろく」までは
ひとまず置いておくとして、
その第一歩となる
「むずかしいことをやさしく」
伝えるための、

決定版の方法論を

考えてみたい
 

結論から言えば
「むずかしいことをやさしく」
変換するための最も有効な方法は、
具体と抽象のモードを
切り替えることである。

具体と抽象の切り替え

「むずかしい」とは、
大別して2パターンに分けられる。
 

第1は、
そもそも主張自体が
難解で理解できない、
というケースだ。

もう少し分析的に解説すると、
抽象度の高いメッセージが、
相手の理解を超えてしまっている
という状況である。

「質的に難しい」と
表現することもできるだろう。

 

第2のパターンは、
これに対して
「量的に難しい」場合だ。

伝えるべき内容が多すぎて、
要点がまとまりにくく、
何がメッセージなのか
聞き手がつかみ損ねる状況。

情報過多で、
相手の思考がまとまらないのだ
 

伝えにくい内容を
話さねばならないときは、
まず、「むずかしい」が、
質的な問題なのか、
量的な問題なのかを
峻別するようにするとよい。

情報そのものが難解なのか、
情報が過多なのか。

 

話の「むずかしい」の性質が
特定できたならば、
それに応じた対策を取ればよい。

それが先に述べた
「抽象を具体化する」と、
「具体を抽象化する」だ
 

話が質的に難しいとき、

僕らが選択すべき方法は
「抽象を具体化する」である。


メッセージをそのまま話しても
わかりにくければ、
具体的な例を用いて説明する。
 

たとえば、
経済学における常識のひとつに


「最低賃金をアップさせると、
社会的弱者の生活は苦しくなる」


ということがある。

どうだろうか?


「嘘だろ!」と

思いつつ
この抽象度の高い
メッセージを聞いて、
まったくもって
納得がいかないのでは
ないだろうか。

最低賃金をアップさせれば、
まさに最低賃金ぎりぎりで
働いている社会的弱者の生活は、
楽になるはずであろう、と。
 

しかし、
これを具体的な

を用いて話せば、
相手はたちどころに
理解できるであろう。

具体的には以下の通りだ
 

“最低賃金が、
仮に時給1000円から、
2000円に増えたとする。

もし、自分が会社経営者なら、
どうするか?

人件費が2倍も
アップするわけだから、
今のままの雇用を続けていては、
会社は赤字に
なってしまうかもしれない。

 

さてその時

経営者はどうするか?


当然雇用を減らす
 

では、そのとき
雇用調整の対象になるのは、
社内のどういう人だろうか?

経営者としては、
生産性がどうしても
低くなりがちな方から、
辞めてもらいたい。

つまり、

低スキルの方


あるいは家事

育児と両立しながら
時短勤務などで働いている
社会的弱者の人から
経営者は雇用調整を
せざるをえなくなる
 

だから、最低賃金アップは、
社会的弱者の生活を
苦しくしてしまう政策なのだ

 

話が、量的に難しいとき。
たとえば、
映画や小説の内容を
要約しろだとか
職場で起こっている課題を
説明しろと言われた場合、

話すべきことが
多岐にわたりすぎて、
そのまましゃべっても
相手に伝わりにくいはずだ。
 

そうした場合に選択する方法は、
「具体を抽象化する」。

僕らがやるべきは、
その膨大な事項を、
一言、せいぜい

2-3にまとめるなら、
どういうことになるのかを
考えることだ

具体的で伝わらないときは抽象化する

 

なるべく本質的なことを
失わないようにしながら、
抽象化してシンプルにまとめる。

「職場の課題は
一言でいうなら
若手のモチベーション低下です」

「ガンダムというのは、
戦争の中での
ヒューマンドラマなんです」

「ラグビー日本代表が
躍進できたのは、
ONE TEAMになれたからです」

「ももいろクローバーは、
いつだって全員が全身全霊、
一生懸命だから、推せるんです」

など。
 

具体で話していても、
結論が伝わらないなと思ったら、
シンプルに要点をまず抽出して、
それに沿って
厳選したエピソードを
ひもづけていく。

そちらのほうが、
相手には内容を
理解してもらえるようになる。
 

論理的な話し方にも、
具体と抽象という
2種類のアプローチがある。

話のむずかしさが
質にあるのか

量にあるのかを特定し、
一方で伝わらなければ、
他方を使う。

優秀な方の中には、
自然と使い分けていた方も
おられるだろうが、
以後はぜひ意識的にこれを使い分け、
ご自身のプレゼン能力アップに
活用してもらいたい。

と、偉そうに言っている僕は

誰よりも人見知りで

プレゼンが大嫌いだった

 

具体と抽象

 

この切り分けが分かった時

少しだけプレゼンへの抵抗が

無くなった