会議はなんとか予定通り終わった。

 

やはり

「3クラスの立て直し」

と言う問題ではなく、

 

「中学部のブランド化」

という大義を中心に

置き直すことで、

 

一部の教師の問題ではなく、

中学部に関わる

全ての教師の問題

 

そう受け止めてもらえ、

評価の高い教師の

コンピテンシーの抽出と

 

これは少々刺激が強かったと思われるが、

 

生徒からのアンケートを取ることで

「生徒から見える自分」

と向き合せ、

この改革の主役は

「教師」ではなく、「生徒」である

 

と言うことが、

共有出来たことは収穫だった。

 

会議終了後、

 

「永井先生、よく頑張った。

準備も含めて大変だっただろう。

 

明日は代休が取れるように

既に人事に手配してある

ゆっくり休んでくれ」

 

「ありがとうございます。

ありがたく休ませて頂きます。

しかし、柊先生、

これからが本番ですね」

 

「そうだな。

僕はこれから理事長らと

今後について話し合う予定だ。

 

ここからは僕らが主導するのではなく、

今日の会議で共有できたことを

東陽学館がどう形にしていくか?

 

我々はそれをサポートすることになる。

 

結果は、火曜日に報告するから

火曜日にミーティングの手配だけ頼む」

 

そう言って、理事長室に向かった。

 

「柊先生、今日は

本当にありがとうございました。

 

当初の趣旨である

3クラスの立て直しではなく、

 

あえて「中学部のブランド化」

と言う課題を共有させる事で、

中学部の教師に

一体感ができると確信しました」

 

「私も当初は3クラスの問題に

対するサポート

そう捉えていましたが、

 

石川先生や松田先生との

協議を重ねるうちに

 

全職員が主体性を持たないと

 

「個人的な問題」

で終わると思い直しました。

 

ここからは弊社が

主体的に何をどうするか

決める事はできません

 

我々は最後までやり遂げますので、

遠慮なく、ご相談ください」

 

「ありがとうございます。

本日の夜ですが、

慰労も含め、

懇親会を開きたいのですが

どうでしょうか?」

 

「わかりました。

弊社は私だけでよろしいでしょうか?

永井をはじめとするメンバーは

この2週間、

このプロジェクトの準備のため

休みがほとんど取れていません。

 

メンバーには明日

代休を取らせています。

ご了承いただけますか?」

 

「もちろんです。

石川も松田も

そうしてあげたいのですが、

 

体育祭を控えていることもあり、

準備のため、終了後改めて、

どこかで休みを取らせます

 

では柊先生、

18:00にご自宅へ

ハイヤーを向かわせます。

それまでゆっくりお休みください」

 

一旦自宅に帰り、

今後のことについて考えていた。

 

言うまでもなく

佐竹先生との面談」

 

今日の会議でも

極力晒されないよう

配慮したつもりだったが、

 

佐竹先生自身が

どう受け止めているか

 

表情や仕草だけでは

測りきれなかった。

 

会議中、

常に佐竹先生の様子を

見ていたが、

アンケートの開示の時でさえ、

淡々と見ていた。

 

 

その上で、

かつての僕との確執が

今でも大きい場合、

腹を割って

話し合うことができるか?

 

そのための布石として、

会議の最後に敢えて、

過去の自分を

全教師の前で告白した。

 

「僕は

とことん佐竹先生と

話し合う覚悟を持っています」

 

そのメッセージが

伝わっただろうか?

 

いくら考えても

どう言う話をしようとしても

彼がどう言う対応をするか、

予測はできなかった。

 

考えている間に

いつの間にか

眠っていたようで

 

車がついたことを

伝える電話が来て

 

「はっ」となり、

慌てて車に向かう。

 

東陽学館が手配した車に乗り、

懇親会を行う

レストランに向かった。

 

すでに先生方は

皆ついており、

 

既に今日の事について

いろいろ話し合いを

しているようであった。

 

「ご招待いただき、

ありがとうございます」

 

それだけ伝え、

この後の話について

どう言う話が出るか?

 

そこを確かめたい

と言うこともあり、

敢えてそれ以上は話さなかった。

 

「柊先生が来るまでに、

今後のことについて

いろいろ話し合っていました。

我々としては、

 

1、体育祭が終了次第、

 アンケート上位の教師を中心に、

 全生徒と面談を実施

 

2、ここで上がってきた問題や

 悩みを受け止め

 学年集会を開き、

 今後の中学部について学年ごとに

 丁寧に伝える

 

3、アンケート下位の教師は

  東急学院の研修に合流させ

  メインからは外し、

  ダブルティーチング体制に変更し

  サブとして、

  メインの教師のフォローに充てる

 

4、佐竹先生の

 面談結果を受けて、

 その報告の内容で

 今後の対応を決める

 

と言う考えで

体制を立て直したいと

考えていますが、

柊先生のご意見を

教えてください」

 

「基本的に今の考えで

いいと思います。

強いて加えるとしたら、

 

3については、

「ゴール」を明確にすることです。

例えば模擬授業を行い、

ある一定点数以上なら

合格とする、と言った感じです

 

それ以外は特にありません。

やはり4つ目の

佐竹先生との面談が

鍵だと思っております.

 

結果次第では

改革の方向性にも

大きく影響すると

考えています。

 

御校の方針に沿った

結果になるよう

全力を尽くします」

 

それから色々話をしたが

正直あまり覚えていない。

 

今の僕には

「佐竹先生との面談」

 

ここを突破できるかどうか

それだけだった。

 

この面談で

「過去を変えることが出来るのか」

それとも

「未だ確執が

重くのしかかっているのか」

 

この面談で全てが決まる。