あっという間に最終日となった

 

 

研修前、人事部長に散々脅されたが、

少なくとも僕のような

「ちょっとヤバい奴」はいなかった

(と思う)

 

そして、誰一人欠けることなく

最終日を迎える事が出来た。

 

本来の目的は、

「仮免許を合格させ路上講習に行かせる事」

だったので、

 

現場研修での心構えとか、

授業の準備の仕方とか、

そういうことを伝える事を

想定して計画をしてきたが、

 

彼らと過ごした8日間で、

この研修で一番学びが多かったのは、

結局僕だった。

 

この8日間多くの新卒社員に対し、

時間の限り個別相談、にも乗ってきた。

しかし、

結局はすべて伝えた事は

「自分に言い聞かせている事」だったと思う。

 

現場に出れば、

当然優秀な教師の授業を中心に

見学したり、模擬授業の練習をしたり、

 

後半になれば、

授業の一部あるいは

1コマ丸ごと授業をする機会もある。

 

当然、思ってたんと違う、

という場面も多くなるだろう。

 

特に授業については、

実際やってみてその難しさや、

生徒からの厳しい反応を前に

心が折れそうになるだろう。

 

だから、あらかじめ

「こういうことがあるからこうしようね」とか

 

「こういう時は、こういう対応をするんだよ」

的な話がメインとなる。

 

しかし、僕自身自分でこの研修の計画を立て

研修を日々行う過程において、

実際誰よりも「思ってたんと違う」と感じた。

 

そんなこともあり、

僕が最後にできる事は何かと考え、

たどり着いた答えは、

 

「僕の今持てる

全てを注ぎ込んだ

全力の模擬授業を見せる」

だった。

 

必要なことは散々話したし、

あえて議論という形をとって、

 

自らが気づきを得るようなこともやった。

もうこれ以上僕から話す事はない。

 

だったら、新卒たちが

近い将来に待っている授業というものを

実際に見せる事。

 

それを見て彼らがどう感じ、どう思うか?

 

自分が選んだ道の先にある

「授業」という名の仕事とは

どんなものなのか?

 

僕自身が見せて、

彼らの今後の糧になればいいと考えた。

 

「今日で第2タームの研修は終了だ。

みんなよく頑張ってくれた。

 

毎回提出してもらった君たちのレポートは、

君たち自身の振り返りのためにやってもらう事が、

本来の目的だったが、

 

実の話、一番得したのは僕だと思う。

君たちのレポートは、

今後の僕のキャリアや仕事に対し

大きなヒントをもらった。

本当にありがとう。

 

というわけで、最終日の今日は、

本当は別のプログラムを考えていたんだけど

僕の今の全力の授業をみんなに見せようと思う。

 

もちろん僕よりすごい先生はたくさんいるから、

本来模擬授業をやるなら、

教科長あたりに来てもらって

やってもらおうかなとも思ったんだけど、

この第2タームの研修の責任者は僕なので、

申し訳ないが僕の授業で勘弁してほしい。

 

その中で、君たちの中に、

「どんな気づきがあったか」

「自分ならどうするか」

 

あとは授業後にみんなにいろいろ聞くので

「聞いてみたいこと」

そう言った事を意識しながら見ていてほしい。

 

そして、

「誰よりも教師を見る目が厳しい生徒」

を意識してほしい。

もちろん生徒役はみんなにやってもらうから、

本当の生徒になったつもりで臨んでね。」

 

そう言う訳で、早速模擬授業を行った。

単元は「確率」

比較的苦手な生徒が多い単元なので、

数学の授業の中でも

かなり改修や変更を加えた単元だ。

 

特に数学は「机上の学問ではなく、実学」

ここを特に意識した。

 

まず「確率」という学問は

唯一「未来を予想できる」世界だということ。

 

言い換えれば、

「タイムマシン」といってもいいかもしれない。

例えば、ばくちの世界において、

なぜ「胴元」は絶対に損しないのか?

ちょっと難しいけど

聞けば確実に「はまる」

「モンティ・ホールの問題」の解説

 

また、確率という学問は、

偉大な数学者パスカルとフェルマー

と言う人物が、

「ギャンブルで勝つための公式」を

導き出し、お金持ちになろうと言う、

とんでもない動機から

生まれたものであり、

*諸説あり

その後、さらに統計学へ発展し、

テレビの視聴率、

保険の掛け金の設定、

天気予報など

あらゆる分野で使われている。

 

そんな話からスタートした。

 

 

おそらく僕の中では

一番トライ&エラーを加えた

そんな単元だ。

一部高校数学までも踏み込んだ

内容になっている。

 

 

そんなこんなで20分間の

模擬授業は終わった。

おそらくこれまでで、

2番目に緊張した授業だ。

 

なぜ1番ではないかというと、

一番緊張したのは、

学生の時、

栄進学院で2回目の模擬授業を

鷹司先生に見られた時が、

今でも僕にとっていい意味でも

悪い意味でも

強い影響が残っているから。

 

最初は「生徒役」の新卒たちは、

当てても照れ臭そうに反応していたが、

 

初見で生徒をつかむことは、

僕にとっては比較的得意な事なので、

授業を進めていく中で、どんどん

「本物っぽい生徒」になってくれた。

 

「さて、これが今の僕の

限界レベルの授業です。」

 

生徒の立場でもいいし、

僕の上司の立場でもいい、

同僚の立場でもいいので、

思った事、感じた事、

分からない事何でもいいので

言ってほしい。

 

ただし、1つだけルールを決めます。

自分以外の発言も

すべてメモをしてください。

それらはこの後の研修で

必ず役に立ちます。

 

「では、厳しい目を持つ

生徒である君たちの

本音をどんどんぶつけてください」