塾は教育の場であると同時に、

一民間企業だという厳しい現実がある。

 

生徒がいなければ、

赤字が続けば

その教室はなくなる。

 

場合によっては、

その学習塾そのものが

つぶれる事もある

 

仮に教室があっても

「この先生は自分の事を

分かってくれない」

 

そう思われた瞬間から

教師という存在である事を

失う。

 

どんなにきれいごとを言っても、

どの塾を選ぶかどうかは、

顧客側にあり、

 

僕らはそれに対し、

無力であるという現実を

受け止めなければならない。

 

学習塾という世界において、

教師と生徒は「対等」なんだ。

 

学校では生徒は

たとえ授業がつまらなくても

やめる事は出来ないが、

塾は簡単にそれができてしまう。

 

だから僕らは必死に研鑽し、

生徒の可能性を限界まで引き上げる事が

できる存在でないと、

教師として存在する事すら許されない。

 

「この先生から

もっとたくさんの事を教わりたい」

「この先生は僕の事を

しっかり見てくれている」

 

そう思われて、

初めて僕らは社会に対し、

「教師である」という

存在を許される。

 

いや、それだけじゃだめだ。

さっきも言ったけど、

保護者が授業料を

「コスト」としてみるか、

 

「将来に必要な投資」

と思ってもらえるか?

 

しかも何の保証もない中でだ。

 

生徒も大事だけど、

保護者の共感と信頼を得る事のは

もっと大事なんだ。

 

何の保証もなく、

しかも「完全先払い」システムで、

年間50~60万位の授業料という名目の

「お金」を頂く。

 

ちょっと考えてほしい、

もし君らが、

「ある事をすれば大金持ちになりますよ。

ただし、その方法は、

先払いで50万円頂きます」

といわれたら、

 

「お金持ちになれるのなら、

そんなの安いものだ」

ほいほいお金を払えるかな?

 

(皆かぶりを振る)

 

そうだよね。

でも、僕らがやっている事も

ほとんど変わらない、

という事をしっかり胸に

刻んでほしいんだ。

 

だから、365日、

ずっと神経をすり減らす思いをしながら

「この子に何ができるか?」

「保護者の期待を超えるには

どうすればいいか?」

ずっと考え続け、

トライ&エラーをし続ける。

 

そして

「行ける高校ではなく

行きたい高校に合格した」

という最後の最後にやっと報われるんだ。

 

でも、僕らとの出会いがその子にとって

本当に良かったかどうか?

 

それは彼らがその後

どういう人生を歩むかといった

僕らの知らないところで評価される。

 

志望校合格は、

確かに僕らにとっては

一つのゴールではあるけど、

そこがすべてではない。

 

僕らは「人間を」相手に、

「将来の日本を

担う人財を育てる

つまり

人材ではなく人財」

 

僕らはとてつもない

大きな仕事をしているんだ。

 

残酷な世界だよね。

厳しいよね。

 

でもね。

「先生、テスト頑張ったよ」とか

「先生のおかげで」とか

 

お金をもらっている側の僕たちが、

顧客から「勇気」をもらっていることに

ある時気づく。

 

だから、「もっと頑張ろう」って

思えるんだと思う。

 

 

この8日間の研修が終われば

いよいよ君たちは現場に出る。

 

そこでは様々な葛藤、

挫折といったものとぶつかると思う。

 

「思っていたのと違う」

と感じる場面もあるかもしれない。

 

繰り返しになるが、

これだけはしっかり胸に刻んでほしい。

 

高額な料金を払い、

しかもその見返りは、

卒業するまでわからない。

保証という概念すらない。

 

それでもわが子を塾に通わせる保護者に対し、

僕らはその「投資」が間違っていなかった事を

全力で証明しなければならない。

 

うまく説明できていない部分が

あるかもしれないが、

それが今日のテーマである

「学校の教師と塾の教師の違い」

に対する僕の答えなんだ。

 

最初の研修にこのテーマを選んだのは、

 

「人に何かを教える」というだけなら、

塾はいらない。

 

塾でないとできない事があり、

それが何かをこの後に続く

現場研修で、

自分の5感でしっかりと感じ、

考えてほしいと思ったからだ。

 

今日は正直僕も緊張してた。

 

果たして僕のような

「新卒の中でも落ちこぼれ」

だった人間が、

会社にとって宝だというべき最も大切な

新卒のみんなに指導などできるのかと。

 

でも稲垣君の発言から始まって、

今日は僕が想定していた以上に

実のある研修ができたと思う。

 

もっと正確に言えば、

僕の方がたくさんの気づきを与えられ、

勉強になった。

 

そしてなにより

君たちとの議論の中で、

もう一度「なぜこの会社に入ったのか」

という原点を思い出させてくれた。

 

僕の方こそお礼を言いたい。

本当にありがとう」

 

話が終わってもみな無反応で、

沈黙だけが続く。

やれ、どうしたものかと思った次の瞬間

皆から拍手が起きた。

 

うれしかったが、

今日で終わりではない。

まだ始まったばかりだ。

 

 

(終わった…。楽しかったけど疲れた…。

あと7日間僕は持つのか…)

 

こうして新卒研修1日目

が終わった。

 

き、きつい・・・

 

鍛えられているのは新卒ではなく

どうやら僕の方のようだ