　誰かの、何かの本で読んだと思う。

　新しく恋人ができると、前の人の方が良かったな、と思うものだ、と。

　一番良かった住まいは、結婚して最初に住んだ物件だ。会社の持ち物件で、広さと言い間取りと言い、収納の多さと言い、文句のつけようがなかった。そこに比べたら、どこもどこかしら不満は出てくる。ちなみに、その宿舎は、もうない。どこぞの企業が買って、巨大なマンションになっている。

　今のマンション。間取りはいいけれど収納が、とか、キッチンがどうとか、不満がどうしても募る。

　できるだけ、シンプルな物がいい。作り付けの家具とか、何やら機能が搭載されたガステーブルとか、いらない。収納スペースは、がらんどうの方が、好きなように詰め込める。コンロだって、３口もいらない。三つ目を使おうとすると、鍋と鍋が触れそうになって、それってどうなんだろう？　取っ手も干渉するし。

　前の部屋は良かったなあ。どうすることも出来ないけれど、思ってしまう。

「次は、好きにすればいいよ」

　夫が言う。次は自宅で、リフォームか建て替えか、どちらかをする予定である。限られた予算、スペースで、どれだけ思い通りにできるだろうか。

　別に、傷つけようと思って作ったわけじゃないよなあ。

　キッチンに立ちながら、ふと思う。

　すべては住む人のため、良かれと思って作られた。

　それこそ、限られた予算とスペースで。

　完璧な人間がいないように、完ぺきな物件などない。不満ばかりでは、家が可愛そう。

　どれだけ快適に過ごし、楽しい思い出を作れるか。

　捨て活と、段ボールとの格闘は、まだまだ続く。

　引っ越す時に、感謝の気持ちでいっぱいになれるよう、明日を迎えます。

　それでは、また。

　追伸

　写真は、かつてあった喫茶店。各テーブルの上に、ひもを引っ張って点ける、昭和の蛍光灯が下がっていました。結構人気だったのですけれど、なくなってしまって残念。

　最近は写真を撮っていないし、撮っても加工していないので、なかなか最近のがアップできていませんが、そのうちに。

過去と、今