米飢饉により無宿者に米を売るのが禁止された清水の港街で、
米問屋坂田屋の養子長五郎は仕入れた米俵を積んで帰ると

増川村の仙右衛門という若者に、その米を寄越せと絡まれる。

その夜には老侍が店に押し入り、刀を突き付けて米を寄越せ

と迫り、長五郎は泥棒呼ばわりして叩きのめすが、哀れに思い

少し分け与えると、罪に問わず一目につかないように帰した。


翌朝、店の前にいた汚い坊主から侍が自害したと聞かされる。

 

米を売らない米屋と責め立てるが、お上を恐れて何もできない

無宿者らに腹が立った長五郎は、彼らを店に連れて帰ると米を

売ってやり、禁を破った罪をひとりで被って捕縛されてしまった。

実父三右衛門は処払を条件に長五郎の身柄を引き取ってやり、

三百両と短筒を渡された長五郎は、船に乗せられて旅に出た。