朝の目覚めは、
「ごめんなさい!おとうさん!!もらしちゃったー!!!」
という寝たふりを決め込みたくなるような叫びから始まった。
ベッドから嫌々起きて、声の方へ行くと、トイレの前で水たまり、いやおしっこたまりの真ん中に、パンツ一丁で立ち往生しているナッパがいた。
今までだったら、おしっこがついた足でびちゃびちゃになりながら右往左往し、家中に甚大な被害をまき散らす子であったが、
なんと、今回は動かずに助けが来るのを待っているではないか。
成長を感じるぜ。。。と意味の分からないとこで感動する私の豊かな感受性のお陰で、ナッパは怒られる事もなく事態の収束を待つだけとなった。
「ごめんね!ほんとうにごめんね!!」
と申し訳なさそうにしているナッパを見ると、怒るわけにもいかない。
パンツ一丁のナッパは不安そうにこちらを見ている。
「大丈夫、大丈夫!」
ナッパを持ち上げ、風呂場に連れて行き、体を洗うように指示した。
とは言え、このおもらしたまりをどう解消するかは一瞬迷う。
タオルで拭く?
いやいや、タオルがおしっこだらけに。。。
ティッシュ?
いや、吸収力が。。。何枚あっても足りなくない?
キッチンシート?
いや、高すぎるしゴミ箱溢れそう。。。
結局、そのまま流せる利点を取り、トイレットペーパーでそのおしっこだまりを拭く事にした。
が、思ったより大量の。。。
いや、どんだけあの小さい体にこの量のおしっこを溜めていたの。
改めて見ると、水たまりというより池である。
私はトイレットペーパーを千切っては投げ、千切っては投げ、
紙で囲むようにおしっこ池を外堀から埋めて行った。
そして膝をついて外堀から拭き始めたのだが、
むわっと煮おってくるアンモニア臭に一瞬、嗚咽しそうになる。
いやいやいや、
久しぶりとはいえ、それは父としていかがなものか。
思い出すのだ。
オムツを代えていたあの時を。
娘のおしっこごときに嗚咽しそうになるなんて。。。
父としての愛を試されている気がした。
私はそれを払拭したく、必死になっておしっこを素手で拭いた。
紙から染み込んだおしっこなど気にするのは、父として違う。
そう、愛があれば、おしっこなんて。。。
奮闘する父の背後から、
調子はずれの歌が聞こえてきた。
Mrs. GREEN APPLEのダンスホールだ。
いつの間にかシャワーを浴び終わり、着替えをしてさっぱりしたナッパが、
優雅にイスに座って美味しそうに水を飲み、のんきに歌っているではないか。
え?
おまえのおしっこだよね?
いつだって大丈夫じゃねーんだわ。
自分がイラっとしたのはすぐにわかった。
ダメだ!
怒ったら6秒待つ!!
アンガーマネジメントの本を読んで訓練をしていた私は、そう自分に言い聞かせてはみたものの、ナッパの歌はサビへと向かって加速していく。
私は、我慢できず強く握りしめたトイレットペーパーをおしっこの池に投げ捨てた。
おしっこの水面が揺れ、その時、何かが動いたのが目に留まった。
何か茶色いものが浮かんでいる。
よく見ると、それは・・・枯れた紅葉だった。
は?紅葉??なんで?
綺麗に枯れた小さな紅葉が、
トイレットペーパーの外堀に囲まれたおしっこの池に浮かんでいる。
え。
もしかして、これって風流…なの?
(絶対風流ではない)
在り得ない場所に浮かぶ、この紅葉からのメッセージを受取れずにいると、
後ではナッパは気持ちよさそうにシャウトしていた。
いつだって大丈夫この世界はダンスホール君がいるから愛を知ることができる。
大好きを歌える!!
6秒はいつの間にか過ぎていたし。
確かに歌えそうな気もした。