( ^ω^)はジャケットを羽織るようです
作者:ID:CLpxyArC0
お題
「旅立ち」
「一人用のペアカップ」
「こたつ」
「風」
無造作に雑誌が散らばった一室。
隣に家が建っているため、日中だというのに太陽の光が全く入ってこない。
・・・そんな薄暗い部屋の壁に掛けられた電波時計が、今日が11月24日だということを知らせてくれている。
そしてその横に掛けられたカーキ色のジャケット。
ある日突然居なくなってしまったツンに買ってもらった唯一のプレゼントだ。
袋から出して壁に掛けたのを最後に、勿体無くてなかなか着ることが出来なかった。
たしか・・・試着で着たのが最初で最後だ。
( ^ω^)「・・・ちょっと着てみるかお」
誰に言うでもなく、ただ独り言をもらしながらジャケットを羽織ってみる。
(;^ω^)「お?」
羽織った瞬間に異変に気づく。
どうみてもサイズが合っていない。どこからみてもピッチピチのガチムチだ。
(;^ω^)「おかしいお、試着の時は完璧だったのに・・・」
( ^ω^)「って、良く考えたら買ったときは薄着だったんだおwww」
対して今はYシャツにカーディガンを着ている。
通りでジャケットがキツイわけだ。
( ^ω^)「・・・それにしても最近はめっきり寒くなってきたお」
道路に向かった窓ごしには、向かいの小さな電気屋が見え、
コタツやファンヒーターが店頭に並んでいるためか、本格的な冬の訪れを感じさせる。
( ^ω^)「そういえばリビングにコタツが出してあったような・・・」
薄暗い部屋を出てすぐの階段を降り、リビングへと向かう僕。
そしてノブの壊れたドアを引くと、そこにはいつものダイニングテーブルとイス、そしてTVとコタツが待っていた。
見慣れた風景だというのに、ツンが居ないとどうしても違和感がある。
( ^ω^)「・・・」
妙な孤独感に浸りつつ、僕は重い足取りでキッチンへと向かった。
冷蔵庫から、ツンが良く飲んでいたバンホーテンのココアを取り出し、一つになってしまったペアのマグカップへと注ぎ込む。
そしてそれを片手に静かなリビングの片隅に置かれたコタツへ潜り込むと、急いでスイッチをONにした。
( ^ω^)「・・・暇だお」
ツンが居た頃は、下らない話に花を咲かせたり、一緒に映画を見たりしたのだけれど・・・
どうも一人になると、何をする気にもなれないし、実際何も出来ない。
冷えたココアを一口飲み、テレビのスイッチを入れようとしたときだった。
ガチャという無機質な音と共に、玄関の扉が開く音がたしかに僕の耳へと届く。
一瞬、ツンかもしれないという期待がよぎったが、何もいわずに去っていった彼女が急に戻ってくるわけもなく、
軽い失望感と共に平常心を保つ。
(;^ω^)「チャイムも無しに入ってくるだなんて・・・まさか強盗・・・」
いつも無用心だのなんだのと言われていたが、そんなことは一切気にも留めていなかった自分を恨みつつ、
どういうわけか僕はコタツの中へと隠れてしまっていた。
そして、それから一間おいて、ついにその人物は足音を立てながらリビングへと入ってきた。
(;^ω^)「・・・」
そして僕がポケットから携帯電話を取り出そうとした瞬間。
静まり返った一室に、聞き覚えのある、懐かしい声が響いた。
ξ゚⊿゚)ξ「あれ・・・コタツのスイッチが入ってる・・・」
・・・ツン。
僕の会いたかったツンだ。
( ^ω^)「ツ―――」
喜びのあまりコタツから飛び出そうとも考えたが、これまたどういうわけか、僕はコタツの中から動けずにいた。
・・・久々に会えたツンに、まずどういった声を掛ければいいのか躊躇していたからだ。
ξ゚⊿゚)ξ「昨日消し忘れたのかしら」
そういうと、ツンは待機電力がどうとか呟きながらコタツのコンセントを抜いた。
おかげで、ほのかなオレンジ色の遠赤外線ヒーターの光が絶え、
僕は狭く暗いコタツの中に独り隠れることになってしまった。
ξ゚⊿゚)ξ「・・・」
そしてまた、静寂な世界が部屋を包み込む。
しかし、なぜかその世界の中に、誰かの言葉にならない叫び声のようなものが聞こえた気がした。
( ^ω^)「ツンは何をしているんだお?」
僕が再び携帯電話を探ろうとした時だった。
今度は僕の真上でコツン、となにか硬いもの同士がぶつかるような音がした。
どうやら、コタツの上にツンが何かを置いたようだ。
ξ゚⊿゚)ξ「・・・馬鹿」
( ^ω^)「・・・?」
ξ゚⊿゚)ξ「アンタが・・・」
コタツごしに、ツンが何かを呟いているのが聞こえた。
しかし、僕にはそれが何なのかが分かず、
暗闇の中で必死になって考えているうちに、ツンは再び部屋を出ていってしまった。
そして足音はどんどん遠くへ行き、ついにその音は玄関のドアが開く音と共に絶えてしまった。
(;^ω^)「こりゃまずいお、早く行かないと感動の再会どころじゃなくなるお」
そう思った僕は、とっさにコタツから飛び出す。
すると、勢いあまってコタツをひっくり返してしまった。
置いてあったココアは床に垂れ流し状態になり、本当に強盗が入ったかのようだ。
(;^ω^)「やばいお・・・やばいお・・・」
とりあえず、コップを立て直そうと思い、床へ目をやった時。
なにやら四角い木枠のようなものが僕の目に飛び込んできた。
(;^ω^)「これは・・・?」
思わずそれを手にとってみようとするが、慌てているためか上手く拾えない。
・・・こんな事をしていてはツンがどこかへ行ってしまう。
そう思った僕は、その木枠を無理矢理掴んだまま玄関の扉を蹴り開け、目の前の道路へと飛び出した。
外は思った以上に寒く、冷たい風は容赦なく僕の体温を奪おうとしていた。
しかし、そんなことは気にしていられない。
とにかく僕はツンの名前を叫んだ。
ツンは僕の目の先に居るというのに、とにかく心の叫びを全て、地球の裏側にも届いてしまうほどの大声で、
一人の女性の名前を叫び続けた。
ξ゚⊿゚)ξ「・・・」
でも・・・何かがおかしい。
叫んでも叫んでも、彼女は一向に振り向く気配は無い。
いや、それどころか立ち止まりもせずに、ただただ川沿いの道を真っ直ぐ歩いている。
(;^ω^)「・・・痛っ」
もういちど叫ぼうと両手を口の両脇に近づけた時、
鈍い音と共に、右手に持った木枠が額へぶつかっ―――
(;^ω^)「こ、これは・・・」
僕が握っていた小さな木枠。
そこにはツンと始めて二人きりで遊んだ時に撮った、一枚の写真がガラス越しに入っていた。
(;^ω^)「こんな写真、僕は飾った覚えは無いお・・・」
思わず独り言を呟いたとき、僕の脳裏に嫌な推測がよぎった。
そしてリビングへ戻り、
僕が毎日めくっていた結婚式までのカウントダウン用の日めくりカレンダー。
それが11月17日で止まっているのを見つける。
冬直前の硬い風を全身に受けつつ、
その推測が現実に変わったのを嫌でも受け入れなければならなかった。
( ^ω^)「・・・そうかお」
・・・夕日の輝く町を・・・
・・この世界をたった独りで旅立ってしまったのはツンではなく・・・・・・
僕だったみたいだ。
( ^ω^)はジャケットを羽織るようです
ー完ー
作者のあとがき
簡単に言うと、
ブーンはツンに逃げられたとばかり思っていたが、
実は逃げた(死んだ)のはブーンだった。
幽霊になったブーンの声がツンに届くわけもなく。
ブーンがめくるのを日課にしていた日めくりカレンダーが、
ブーンの死んだ11月17日で止まっている。
みたいな感じです