埴輪大魔神


憧れの従姉とデートしてきた。
人生初のクリスマスデート。デートらしいデート。

準備万端

寒さで腹を壊さぬようにシャツの下にホッカイロを3つもしこんで・・・。

渋谷で待ち合わせてお台場に行って(若いのが多くて困る)
ランチ食べて海辺をちょっと歩いてフジテレビの展望台に行って
観覧車に乗って夜景を見て、自動車のアトラクションみたいなのに乗って
ビーナスフォートでイルミネーション見てカップル客が多くて
なかなか予約の取れないレストランのムードあるベランダ席で
クリスマスコースなんていうディナーを二人で食べて。
最後に(小さいけど)ダイヤのネックレスをクリスマスプレゼントにあげて
告白する。


ああ、なんて妄想を具現化したようなデートなんでしょう。
ずっと憧れだったことが叶った(馬鹿)


プレゼントには喜んでくれたが、もちろん答えはNOだった。
幼馴染を恋愛対象には見られない、と。
当たり前だろう。幼馴染である前にいとこ同士だ。
(俺はむしろ幼馴染だからこそ好きになるのだが)


でもそれでもいい。
無理やり付き合ってもらったものの
一応それなりに楽しんでもらえたみたいだし。
彼女の笑顔を見れた、それだけで幸せだ。
ありがとう。もういつ死んでもいい・・・。



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従姉はドライだ。色んな意味でドライだ。
俺に対してだけそういう態度をとっているのかと思ったら、
どうもそうではない。
むしろ俺には普段、笑顔で気さくに話してくれる。

そういうのではなく、どこか冷めている。
そもそも恋愛そのものにドライすぎるほどドライなのだ。
いや、諦めている、といった方が良いのか?
人並みに恋をする感情がないわけでもない。
良い男性がいない。かといってそれを無理に探すつもりも無い。

どうも見ていると、もしこのまま行けば、彼女は絶対に一生独身確実だろう。
来年は30歳。

同じ血筋の親戚にはイカズゴケで60歳をとうに過ぎた叔母が二人いる。
俺の大好きな従姉までもがあの道を進むのかと思うとあまりに忍びない。


共通の知人の37歳の男性を薦めてみる。
「嫌いではないが、とくに好きでもない」と・・・。

逆に
「人の心配より自分の彼女作りなさい」
「理想高いのかと思ってたけど、私を好きになるなんて
 理想低いんだと分かった。」
などと言われる。

確かに客観的に見れば世間一般的には
決して高値の花という方でもないかもしれない。
しかし残念ながら、俺にとってあんたより可愛いと思える女は
そうそう見つけられるものではないのだ。
あんたの笑顔はあまりに可愛いすぎる。


確かにまだ今なら、好き嫌い関係なく妥協すれば
彼女の一人もできるのかもしれない。
かつて似たようなことを試みたこともある。
でも、そんな女に、俺があんたにしてやりたいと思ったほどを
エネルギーを注げやしない。





俺の知人にもいたな。


「彼女がマジかわいいと思えない」

「相手の横で寝てる顔見てるとマジ気持ち悪くなってくる」

「勢いで結婚したけど即座に後悔した」


なんでそんな女と付き合えるんだよ。
寂しいからなんとなく?適齢期だからしかたなく?
相手が勝手に言い寄ってきたから面倒くさいから?
性欲の捌け口として便利だから?




俺の父親ですら、母親と結婚した理由を聞いたら。

「単純に言えば、妥協だな」



前の会社の営業部長

「三人つきあってる中で、誰と結婚するか?
 一番最初に孕んだ奴かな・・・」




結局世の中、そんなものなのだろうか。

「年を取ってくると昔のような情熱的な感情は無くなって来る。」
これは俺の母親が以前付き合っていた大手商社のエリートから
言われた言葉だ。

確かに今それを実感している。


だから今後従姉以上に好きになる女は現れないだろう。
どんなに良い女性が現れても、感情移入できず一歩引いて
どこか相手をモノのように打算的に見るようになると思う。

所詮は他人だ。

邪魔だと思ったら情などという甘っちょろい概念は
切り捨てていかねばならんのだ。


よく分かっているはずだ。
我々は”情”を求めても情に裏切られ
情によっては真には救われないということに。


しかし今宵は本当に好きな人と過ごせた
幸せな時間の余韻に浸らせてくれ。