20代後半頃のこと。
「これ、履かないならもらってもいいか」
そいってブランド物のジーズを弟から譲ってもらった。
サイズがピッタリでちょうどよかったこともあり、毎日のように履いていた。
気づくとジーンズの左太腿のあたりがすれて破れていた。その後も気にせず履き続けていたらまあまあ大きな穴になってしまった。
ある日のこといつものようにジーンズを履こうと手にとってみると… あっ!一瞬たじろいだ。ジーンズの穴がグレー(ラメ入り・銀色にもみえる)の布で繕ってあった。なんて事してくれたんだとやや落ち込んでいると、おばあちゃんがやってきて、
「穴ぁあいとったで縫っといた」
「この当て布は、あんたが赤ちゃんのときおんぶするのに使っていた はんてん だったやつ」
と説明してくれた。
そうか昔の布を大切に取ってくれていたのか。それを聞いて履くことにした。せっかくおばあちゃんが繕ってくれたんだし。
とはいえ最初は履くのにためらいもあった。でも履いているうちにだんだんジーンズへの見方が変わっていき個性的でいい感じに思えるようになった。
思いの詰まった僕だけの唯一無二のジーンズ。
僕が履くから意味があるジーンズ。
堂々と履けばそれなりにみえる はんてんジーンズ。
当時は素直にいえなかった感謝。今になって天国にいるおばあちゃんにときどき伝えている。
おばあちゃんありがとね。
夏目ゆうしん