先日、ある男性に「50歳をすぎた頃から、声が出にくくなった」という話をうかがいました。

 

以前、あるアナウンサーの方が「声は体の中で起きるのが一番遅いので、早起きする。」ということを言っていたのが

 

記憶に残っていますが、確かに声は目が覚めるのに時間がかかります。

 

つまり、朝いちばんは声が低く、その声を仕事として話す本番にもっていくのに時間がかかるということです。

 

もちろん、歌う声も同じです。

 

そして、朝だけでなく、毎日歌っていないとどんどん怠けていくのも声です。

 

唱歌教室に参加される方で、「50年歌ってない」という方もいらっしゃいました。

 

始めたころは、なかなか声が出ずに悩んでおられましたが、月に2回歌っていると、

 

月に2回歌うのに十分な声はでるようになるものです。

 

その声をよく響くようにしたり、大きくするためには、毎日の鍛錬が必要です。

 

しかしながら、すぐ疲れるもの声帯の特徴。

 

「カラオケで6時間歌った」なんていうのは、もってのほかで、

 

生徒さんには「お茶を飲みながら、ぼちぼちやって2時間まで」とお約束していただいています。

 

若いころは力任せにやっても出ていた声が、年齢とともに声帯(筋肉と皮です)が動きにくくなります。

 

動きにくくなると、声がでないだけでなく、音程も正確に取れなくなってきます。

 

音程は声帯を動かすことでもありますし、体の筋肉のコントロールでもあります。

 

対策をいくつか挙げておきますので、できることから始めてみてください。

 

◆歌う時間を適度に増やす。

 適度にです!

 

◆毎日鼻歌でもいいので歌っておく。

 毎日でなくても、気が付いたときに。

 

◆スポーツを始める。(私は苦手です)

 体の大きな筋肉を動かせることが大事です。

 

◆いい指導者を探す。

若い方への指導と、年齢を重ねた方への指導法が同じではいけません。

 

◆そして、やりすぎない。

 実はこれが一番大切です。

 

他にも、喉の乾燥をふせぐ対策などもいいかもしれませんね。

 

趣味で歌っておられる方で、40を過ぎた頃から声が出なくなり、私のところに来られた50歳の頃には

 

上のレやミの音が出しにくいという方がいました。

 

それより上を歌おうとすると、とたんに体が委縮して、まったく出ない。

 

この方は二つ理由がありました。

 

一つは上に挙げたように、

 

「年齢とともに声帯や体の筋力が落ちていたこと。そして、声が出にくいという理由でしばらく歌っていなかったこと。」

 

もう一つは、

 

「私はもう高い音は出せないのだ。」と思い込んでいたこと。←これがかなりやっかいです。

 

レッスン最初は「大丈夫やっているうちに出るようになりますよ。」と言っても、

 

「いやいや、出ません。高い音はなかなかむつかしい。」と反論されます。

 

何度励ましても、頭が拒否するんですね。

 

蛙とガラスの天井です。

 

(透明ガラスの天井を置くと、それ以上は飛べないと思ったカエルは、ガラスを取り除いてもそれ以上飛ばないらしいのです。最近はもう少し違う意味でガラスの天井という言葉がはやりましたね。)

 

するっとうまく歌えて、ミより高い音が歌えてもまだ、「まぐれです」「やっぱりちょっと苦しかった」などど、できない理由を探されます。

 

そんなこんなで、励ましながら、頭を「私は高い音が出る」と思えるように頭の中を変えていくと、

 

半年もしないうちに上のシ(つまり4~5度上)まで、簡単に出るようになり、

 

さらにしばらくして、3点ド~レあたりを、発声では出せるようになりました。

 

あれから20年、今はもう70歳代後半になられましたが、楽しくシューマンの歌曲を歌っておられます。

 

どなたかの参考になればいいなと思います。