二流小説家 | そういえば、昔は文学少女でした。

そういえば、昔は文学少女でした。

クリスマスと誕生日に一冊ずつねだった、「世界少女名作全集」。図書室の本を全部借りよう、と思ってた中学時代。なのに今では読書時間は減る一方。ブログに書けば、もっと読むかも、私。という気持ちで始めます。洋書から雑誌まで、硬軟とりまぜ読書日記。

二流小説家
¥1,995
楽天

奇妙なお話でした。新聞の書評で気になっていて、蔦屋書店に初めて行った日に買ってみた一冊。


舞台はニューヨーク、主人公の僕=ハリーは、しがない小説家。いろんなペンネームを使い分けて、お色気SFだの吸血鬼大河ロマンだののマニアックなシリーズ本を書くことで食いつないでいますが、自分の名前ではまだ世に出ていません。恋人にも去られて冴えない日々。裕福な家の女子高生、クレアの家庭教師となって、忙しい彼女や友達のレポートや作文を代筆しています。


ところがある日、そんなハリーに、一世一代のビッグチャンスが到来。12年前の猟奇連続殺人で投獄されている容疑者、ダリアンから、自分の回顧録を書かないかと持ちかけられるのです。端正な顔立ちで女性たちに写真のモデルにならないかと誘っては、惨殺して頭部を切断した恐ろしい事件。本人は無罪を主張するも、おそらく死刑は確定、という男に面会し、話を引き受けたことから、また起こる殺人事件。やがてハリー自身も忌まわしい渦の中に巻き込まれていくことになります。果たしてダリアンは本当に殺人犯なのか、真犯人は別にいるのか?!


という本筋ミステリに絡めて、利発なクレアとの凸凹コンビ、被害者遺族のひとり、ダニエラとの恋模様、亡き母の扮装をして別人になりすますドタバタプロセスなども満載。さらに、随所に挟み込まれるハリーが書いた小説がやたらに面白い!ヴァンパイアにしても惑星ゾーグのSFにしても、実際に出版してほしいくらいです。語り部として小説を進行していきつつも、小説家の事情や作法やテクニックを自虐的に織り込んで、なかなかよくできたエンターテインメントでした。最後にあっと驚くどんでん返しも用意してあるし。


ただ問題は、あまりにもエログロシーンが頻発すること。特に人殺しのディテールがこれでもかこれでもか、と描写されるのが気持ち悪いです。映画化しないでください。ああ、こういうときは原語で読んだほうが、脳にダイレクトに情報が届かないことがメリットになるんだわ。。。


タイトルの原題は「SERIALIST」です。「続き物作家」と、「シリアル・キラー(連続殺人犯)」を掛けているんだと思う。そのわりに「二流小説家」っていうのはなんだかな、と思いますが、邦題としてはこちらがキャッチーということかな。