帯に養老先生のコメントとして、『S.キングよりも怖かった』とあるわけです。怖いもの見たさで買ってしまいました。そしてほんとに、怖かった!なんたってノン・フィクションですから。。。
- 著者は広告会社アサツーディ・ケイの200Xファミリーデザイン室室長。8年前から数回にわたって、クリスマスと正月の食卓風景について、インタビューと写真日記調査を繰り返し、223人の主婦のデータをとってまとめた結果がこの本です。数十名対象のライトなものは、時々私も仕事でやりますけど、それでも結果を読み込むのは大変な作業。223人って、気が遠くなります。なんて膨大なんだろう。途中体を壊して休業されたこともある、とあとがきにありました。岩村さんの根気に頭が下がります。
そして、浮かび上がってきたのは、まさに「破滅する日本の食卓」の姿です。上に書いたように、私も仕事で一般の方々にインタビューすることがあるのですが、その端々で、「いったい日本の食生活はどうなっていくんだろう」と疑問を抱くことがよくあります。「どうせ作っても子供が食べないから、おかずは基本的に作りません」とか、「お茶はペットボトルで飲むので、うちには急須もありません」とか、にっこり笑いながら教えてくれる同世代の主婦に出会ったりするのです。「うーん、でもこれはごくレアなケースなんだ。きっと」と自分に言い聞かせていたんだけど、あながちそうではなかったのか、と思わされるのでした。
ここでエッセンスを紹介してしまうのは勿体ないので、ぜひ実際に読んで恐怖を味わっていただきたいと思いますが、クリスマスのごちそうや、お正月のおせちや雑煮がいったいどんなことになっているのか、そしてこのふたつの行事にまつわる怪奇現象が、どれほどの家庭で同時進行しているのか、知ってしまうと、もう・・・
あ、でも、もしかして、「こんなの当然じゃないの」と思う方もいるかもしれませんね。これを読んで怖いと思うか、思わないか、はある種の踏み絵になるのかも。
テーマはあくまで「食」なのですが、そこにフォーカスしていくと、家族をめぐるいろいろな風景が見えてきます。
ひとつだけ、プロローグのエピソードをネタばらし。
子供が中学生になっても、高校生になっても、「サンタさん」にプレゼントをねだる手紙を書かせている主婦が出てきます。ぎょっとしていると、ひとり、ふたりではないんですね、これが。
「サンタクロースを信じていることは、夢のあること」と、異口同音に語るお母さんたち。うわあああ。
私、「負け犬」でよかった、と思ってしまいました。