小川 糸著 いとしきもの 文春文庫
小説家の小川糸が「寄り道だらけの山小屋日記」としてNHK出版の「すてきにハンドメイド」と「これさえあれば」として旅行読売出版社の「旅行読売」に連載した文を中心に多くの写真を添えてまとめたのがこの「いとしきもの」である 小川糸さんの小説を読んだわけでもないし、連載されている雑誌などを愛読しているわけでもまったくない このブログにもあげた彼女の「針と糸」をたまたま読んで、たまたま痛く心が揺さぶられたからなのだ あれほど本を読んで号泣したことはなかった 人生の中でもこんな経験は今まで皆無であった しかしながら、小川糸の文が「心をつかんで離さない」なんてことはないのだ むしろ、文は文章となっても依然として淡々として進んでいくのである
少し客観的に見てみれば、小川糸さんの文は事実が連なっている いや、事実が連なっているような文である この「いとしきもの 森、山小屋、暮らしの道具」も淡々と事実が進む そして、写真がその事実をさらに客観的に事実として認識させる その事実の周辺から「山小屋での暮らしの豊かさや満足していること」がじわっと滲んでくる 文に起伏があってわくわくするわけではない ひたすらに淡々と進むのだ
糸さんは都会や海外への行くことがままあるようだが、山小屋での暮らしは淡々とすすんでいく 彼女のこの「いとしきもの」からはそれが滲んでいるんだろうと思う まさに山小屋での暮らしはケハレの日々である
