キャブセッティング迷宮 | ハンサムブログ
キャブレターの混合気の濃度決定を司るジェット類。



下からSJことスロージェット、中段のピンがニードル、上がMJことメインジェットだ。
今回準備したのは写真以外にキャブに装着済みのものも含めたら4種、3種、4種の計11種となる。
このジェット類は、デロルトキャブの日本代理店が店仕舞いしてしまって一括入手ができなくなり、モトグッチやべスパの部品を扱ってるショップなどを数店当ってかき集めたものだ。

ニードル1本あたりの段数が4段あるから、これを単純に組み合わせると192種類のセッティングが可能という事になる。その他にもエアスクリューの開度、フロート室油面などの調整要素がある。悩み出すと深みにハマるという事がおわかりいただけるだろう。

ここから最適な組み合わせを探し出すのがいわゆるキャブセッティングだ。
CHAR MO(CHM)144㏄ボアアップキットを装着してからすでに2000キロ以上を走行し、その間、あらゆる組み合わせを試してみて、ついに決定打ともいえる組み合わせを導き出す事が出来た。

最初、キットをポン付けして走ったところ、低中速のトルクが思ったように出なかった。
薄くて焼きついたら一大事と、とりあえずMJを128→132に交換してナラシ運転に励んだが、
低中回転での空燃費がグズグズと濃い感じで、ニードルクリップを最上段にセットしてやっとなんとか走る状態だった。2段目では走行不可状態だった。パワーバンドに入れればドギャアアアア!とばかりに激しく吹け上がるが、これでは実用性皆無。

そこでSJを思い切って7番落とし、SJ62→55に交換すると低速域が劇的に改善した。
しかしそれでも5000~6000が濃くてバリバリと回転が引っかかり満足できなかった。
さらにSJ52まで絞るとここはいい感じになった。しかしそこから上、6000~7000あたりに大きな谷ができてしまう。こちら立てればあちらたたずの悩ましい状態だ。

SJを思い切っ絞った事で劇的に改善したことから、SJは小さい方が良いという固定観念ができてしまった。これがかえって悩みを深くしてしまった。

ニードルをX2からX4に変えたのだが、SJが薄いままセットアップを続けたので、良い傾向は見られたが、どうしても納得のいくところまでいかない。色々と極端なセットを試して、解析を続け、MJ132、SJ52、ニードルX4(ノーマルX2)3段目という、納得に近いセットを見つける事ができた。でもアクセル開度と回転、パワーの関係がリニアとはいいがたく、100%の納得ではなかった。
これがキャブレターセッティングの限界かと、落としどころを決めかけたとき、まだSJ58が手付かずのままな事を思い出し、試してみる事にした。
SJが濃くなれば当然ニードルを薄くせねばと、クリップを2段目に上げた。空ぶかしでエアスクリューをだいたい合わせ、走り出したとたん「お!」と声が出た。

低回転から気持ちの良いトルクが出て、アクセル開度とパワーの関係も比例関係だ。
悩んでいた5000~6000回転も滑らかに力強く上昇し、軽く飛ばす程度なら充分。
谷もそんなに深く無く、越えて7200からはどぎゃああああ!と暴力的加速、アクセルレスポンスも抜群だ。

これで、他のRSオーナーさんに「ノーマルよりもとても扱い易くてとても速いでしょ?」と自信を持って試乗に差し出せるレベルのセッティングが出た。

ネチネチネチネチと諦めずに頑張った甲斐があったというものだ。

下図はノーマルX2ニードルとX4ニードルの比較図です。
右はノーマルX2の1段目とX4の2段目をそろえて並べた時の、テーパー部の位置関係比較です。
分かる方は参考までに。



また、上の写真左の真鍮色の半月状部品は、セッティング途中にピン!と飛ばしてしまい、30分間頭を抱えて途方に暮れた後に立ち直って、自主製作した代用品です。その右が正規品のニードルクリップ。
カート屋に注文して届くまでの数日を、キャブ内でしっかり機能してくれました。

今回、ここまで読めた方は、同好のマニアのみだと思われます。

MJ132、SJ58、ニードルX4上から2段目、エアスクリュー3時15分戻し。自信を持っての推奨セッティングです。(TYGAチャンバー装着時)