外国産のこういったものは、そのままポン付けしたら十中八九トラブると見ていい。出荷状態はあくまでも素材と捉えるべきだ。
ますはポート内の鋳造段差をヤスリでコリコリと削った。
個人的には鏡面仕上げまでする意味は薄いと考えているが、さすがに高速で流れる吸排気を乱す不要な段差は見逃す訳にはいかない。
ヤスリが届く範囲で徹底的に段差を消した。
次に目を閉じて指先でシリンダー内壁をなぞり、ポート面取りが適切かを確認。ここは問題なさそうだ。
ピストンスカートのピン角取りは既に済ませてあるので、ピストンリング溝の糸面取りと、リング内側の糸面取りを行い、リング固着の予防策を打った。これも指先でなぞった感覚が頼りだ。
車体に組み付けたときに、さらに言えば壊れた時、あそこをもっとああしておけば良かったと後悔したくはないから、地味な作業をこころゆくまで行なう。
神経を集中させて、慎重に作業に没頭していると、精神の波形が穏やかに平準化してゆく事が自覚できる。
前回のように反社会的行為でストレスを急速燃焼させるのも一つの手だが、香を焚くようにゆっくりと燃焼させるかのような、こんな時間も私には必要なのだと痛感した。

