「お化けだぁーー!!」

 

 

な~んとっ!


白いモヤモヤは、ニワトリのお化けに変わったのです。卵から顔を出したヒヨコのお化けも一緒に浮かんでいます。

 

「ぎゃーー!怖くて、オシッコが出ちゃうよ~!」

 

怯えるピンクに、ブルーは言いました。

 

「このお化けは、モッタイナイお化けのコケコッコだよ。
攻撃はしてこないから、安心して!」

 

すると、コケコッコは悲しそうな顔で言いました。

 

「うわ~ん!
モッタイナイよぅ!コケコッコーー!」

 

グリーンは、 開いたゴミ袋を覗き込みます。

 

そこには、パックに入ったままの卵が4個捨てられていたのです。

 

「また卵が粗末にされたね。モッタイナイ!
10個入りの卵を買ったけど、6個しか食べなかったんだ。
それなら、6個入りの卵を買えば良いのに。」

 

ブルーも、悲しそうに言いました。

 

「値段を見ると、6個入りより、10個入りのが得だと思うんだよ。
でも、買うなら責任を持って全部食べないとニワトリに申し訳ないよ。」

 

「本当に、ごめんね。コケコッコ!」

 

グリーンは謝りましたが、コケコッコは怒って言いました。

 

「ニワトリが産める卵は、1日に1つだけ!
ここまで必死に成長して、みんなで精一杯産んだ卵なのに、また捨てられた!
命を大切にしてよ!コケコッコ~!」

 

泣き叫ぶコケコッコを見て、ピンクも悲しくなりました。

 

「モッタイナイお化けって、本当にいるのね。
コケコッコの言う通りよ!
卵を残すなんて、モッタイナイ!」

 

すると コケコッコの横から、またしても白いモヤモヤが出てきたのです。

「きゃーーー!次は何!?」

 

ピンクが腰を抜かすと、白いモヤは大きくなり、袋のお化けに変わりました。

 

「おいしい お米」という文字が書かれています。

 

 

「このお化けは、お米のモッタイナイお化けだよ。

俺達は、【お米ちゃん】と呼んでいるんだ。」

 

ブルーがピンクに伝えると、お米ちゃんは泣きながら言いました。

 

「僕はね、【新しいお米を買ったから、古いお米はいらない!】って捨てられたんだ。
まだ、食べられるのに~!」

 

すると、グリーンが悔しそうな顔をして叫びます。

 

「モッタイナイね!モッタイナイね!
お腹を空かせているギニアの人達に食べさせてあげたいよ!
お米も卵も食べ物を捨てるなんて、モッタイナイよ!」

 

ゴミ袋を抱きしめるグリーンを見て、ブルーは とても辛そうな顔をしました。


それでも手を動かす事は止めず、2人に声を掛けます。

 

「時間がないんだ!ゴミを集めるぞ!」

「はい・・。」

 

ピンクは電柱の影から出て、2人と一緒にゴミ袋を集めました。

「本当に、モッタイナイね。
どうして日本人は、捨てる物を買うのかな?」

 

「・・・。」

 

グリーンの質問に、ピンクとブルーは答える事ができません。


すすり泣くモッタイナイお化け達に囲まれて、3人は全てのゴミ袋をトラックの中へ入れました。

 

ゴウン、ゴウン!

 

ゴミ袋が片付いたのを確認して、トラックの停止ボタンを押します。

 

すると、色々な食べ物のモッタイナイお化けが トラックを囲みました。

 

「モッタイナイよ!モッタイナイよ~!」

 

 

食べ残されたハンバーガーやカボチャ、カビた食パンと肉まん、痛んだキャベツと大根。


みんな悲しそうな顔をしています。

 

「ねぇ・・、このお化け達って私達についてくるの?」

 

ピンクが尋ねると、グリーンは頷きます。

 

「うん。仕方ないよ。
日本では、こんなに食べ物が無駄になっているんだもん。」

 

「そっか・・。」

 

ピンクは野菜のモッタイナイお化けを見て、気まずい気持ちになりました。

 

(私は、苦手な野菜は残しちゃうのよね。)

野菜のお化け達は、しおれて黒くなっていたり、半分以上食べ残されています。

ピンクは、胸が痛みました。

「次の集積所へ行くぞ!」

「・・はい。」

 

ピンクは、ブルーの後を追いかけます。
すると、後ろから熱い視線を感じました。

 

「許さんぞ!」

「えっ?」

 

ブルーとピンクは、同時に振り返ります。

 

「しまった!ミノタウロスが出たぞ!」

そこには、険しい顔をした牛のお化けが浮かんでいました。

 

 

「乳製品を捨ておったな!

食べ残しは、許さんぞ!」

 

「ぎょえーー!」

 

ピンクは怯えながら、ブルーの後ろに隠れます。ブルーは言いました。

 

「この牛のお化けは、人間の心を持っているんだ。牛を育てた酪農家の心だよ。」

「酪農家の心?」

「そう。牛への愛情が強い酪農家は、牛肉や乳製品が捨てられる事が許せないんだ。
だから、めちゃくちゃ怒っているんだよ。」

 

ミノタウロスは、勢いよく鼻息を出しました。

 

「モオォーー!うちの牛のミルクを無駄にしたな~!」

「うわっ!まいったな!」

 

ブルーが困った顔をすると、グリーンがお化け達の前に立って手を伸ばしました。

 

「みんなのお陰で、僕は 毎日美味しい ご飯を食べれるよ!本当に ありがとう!
僕は、絶対に ご飯を残さないって約束するよ!」

 

そう言って、グリーンはお化け達を抱きしめました。

 

「日本では寄付をする食品より、捨てられる食品の量のが多いんだよね。
早くモッタイナイを無くしたいね。」


グリーンは悲しそうに、お化け達を見つめます。
すると、ブルーはミノタウロスに言いました。


「ミノタウロス!!
毎日、これだけの食べ物が捨てられている事を、沢山の人に伝えるよ!
今は、それ位の事しかできないんだ!ゴメン!」

 

「モウゥ・・。」

 

ミノタウロスの怒りは収まらない様に見えましたが、ブルーは お化け達に背中を向けてトラックのドアを開けました。

 

「時間がない!行くぞ!」
「はい!」 「おう!」

 

3人がトラックに飛び乗ると、エンジンがかかります。

ブルルルル・・。

 

トラックは、狭い道路を走ります。
モッタイナイお化け達は、泣きながら後を追いかけてきました。

 

「捨てないでよ!まだ食べられたのに!
モッタイナイよ~!」

 

お化け達の叫び声を聞きながら、ピンクはブルーに尋ねました。

 

「モッタイナイお化けって、最後は どうなるの?」

 

「ゴミが焼却炉で燃やされると、消えてなくなるんだ。」

 

「そう・・。」

 

ピンクが下を向くと、お化け達の声は小さくなっていきました。

 

「ねぇ、ピンク!ゴーグルが粉だらけだよ。」

「えっ?」

 

グリーンは、ピンクにタオルを差し出しました。

 

「あっ、ありがとう。」

 

ピンクはタオルを受け取って、ゴーグルを外します。

すると、ゴミリンは目をつぶってしまいました。

 

ピンクは、グリーンに尋ねます。

 

「ゴーグルを外すと、ゴミリンは黙ってしまうのね。

という事は、ゴミモンスターやお化けの声が聞こえなくなるの?」

 

「うん。嫌なら付けなくてもいいんだよ。」

 

「・・・。」

 

ピンクは黙って考えました。

 

「2人は、ゴミやお化けの声が嫌じゃないの?」

 

ピンクの問いかけに、先に答えたのはブルーでした。

「誰かが知っていないといけないと思うんだ。
ゴミやモッタイナイお化けは、人間が作った存在だからね。」

 

ブルーも、元気良く答えます。

 

「モッタイナイお化けに会うとね、ご飯は絶対に残さずに食べようって思えるから嫌じゃないよ!」

満面の笑顔のグリーンを見て、ピンクは頷きました。

「そっか・・。そうよね。」

ピンクは、もう一度ゴーグルを装着しました。

 

ゴミリンの目が、パッチリと開きます。

「次も、よろしくね!ゴミリン!」


「頑張るギョミ!」

 

ピンクとゴミリンは、笑顔を見せました。

 

ブルルルルル!

 

信号が赤になり、トラックは止まりました。
ピンクは、ブルーに尋ねます。

 

「ねぇ、これだけの食べ物が無駄になっている事を沢山の人に伝えるには、どうしたらいいかしら?」

 

「うーん、そうだね・・。」

 

ブルーは、一息ついてから答えます。

 

「実は、俺はゴミの問題についてを沢山の人に伝える為に、児童小説を書いているんだ。」

 

「児童小説?」

 

「うん。ゴミは燃やされたら、最終処理場に運ばれるだろ。
でも、最終処理場は20年、いや10年も立てば、ゴミでいっぱいになってしまうんだ。

だから、未来を支える子供達に、ゴミの問題を知って欲しくて、クリーンアースレンジャーの物語を書いているんだ。」

 

ブルーの言葉を聞いて、ピンクは笑顔になりました。

 

「クリーンアースレンジャーの物語って、私も登場するのかしら?」

 

「それは、どうかな~?フフフ!」

 

ブルーが笑うと、グリーンも嬉しそうに言いました。

 

「僕の事も書いてね!
ギニアから来たクリーンアースレンジャー!」

 

「うん。日本より物が少ない外国の事も伝えたい。
日本は とっても贅沢な国で、モッタイナイ事ばかりしているんだって。」

 

「そうだよ!
日本人にとって当たり前の日常は、ギニアの人から見たらモッタイナイんだよ~!」

 

ブルルルル・・。

 

みんなで話しながら、トラックは次の集積所へ向かいます。

すると、外を歩く人間達の間をすり抜けながら、モッタイナイお化け達が囁きました。

 

「残さず食べて、コケコッコー!」

「僕は、まだまだ食べれるよぅ~。」

「モッタイナイぶぅ~!」

 

まだ使える物や、捨てられた食べ物達の沢山の命が、今日もゴミとなって燃やされていくのです。

 

★つづく★

 

このお話は、ゴミ清掃員であり、お笑い芸人である滝沢秀一さんの体験を取り入れています。

 

 

滝沢さんは、【回転寿司に行ったら、隣の席のギャル2人が、ネタだけ食べてシャリを山のように残して帰った。モッタイナイお化け、化けて出てきて。】と、本の中に綴っています。

 

そこから、モッタイナイお化けを物語に登場させようと考えました。

 

他にも、【リアルでゆかいなゴミ事典】という本の中には、捨てられた卵について こう書かれています。

 

【ニワトリって、1日1個大事に大事に卵を産んでいる。ちゃんと残さずに食べようって思うね。】

 

動物図鑑にも、「ニワトリは1日1個、卵を産みます」と書かれていますが、書き方によって受け止め方が変わるなぁと思いました。

 

ニワトリにとっては、本当は新しい子供の命なんですよね。それを頂くのなら、有り難みを持って食べなければいけないと思いました。

卵が捨てられる頻度は、少なくはないそうです。

 

滝沢さんは、「食べ物を捨てる事が、心の底から嫌。ゴミ清掃員をやっていると、心が苦しくなる。」と綴っています。

なので、登場するモッタイナイお化けは全て食べ物にしました。

 

お米も実際に捨てられていたそうで、【新米シーズンだから、古米が捨てられたのでは?】と、滝沢さんは分析しています。

 

「米」という字は「八十八」という文字からつくられ、お米ができるまでには88回もの手間がかかる、という意味だそうです。(大人になってから知ったのですが・・。)

 

昔に比べて今は便利な機械で作れますが、気軽に捨てて良いものではありません。


滝沢さんにとって、【米は、心底驚くゴミ】と書いていたので、モッタイナイお化けで登場させました。

 

【生活ゴミの約40%が生ゴミで、食べられる食品が捨てられている。】


【日本は、食料を輸入してまで買っているのに、ゴミにして捨てている】

 

など、滝沢さんは色々な本でゴミの問題についてを取り上げていますので、是非読んでみて下さい。ニコニコ

 

牛のモッタイナイお化けには、酪農家の心を反映させて書きましたが、家畜には感情移入しないように育てていると聞いた事があります。


それでも災害が起きた時には、家畜を置いていく訳にはいかないと考え、家畜の命を守ろうとする酪農家がいるそうです。

 

人間が作り出した物には、命や愛情が込められている事を伝えたくて書きました。

 

尊敬する漫画家 荒川弘先生(鋼の錬金術師の作者)は、酪農家のご両親を手伝っていたので、その経験を漫画にしています。

 

「百姓貴族」という漫画もオススメですが、私は「銀の匙」が特に好きです。

 

この漫画は、農業高校に通う男の子が主人公です。
彼はアルバイト中に、誤って大量のミルクを無駄にしてしまったり、愛情を持ってしまった家畜を買い取って食べるなど、家畜と酪農家の出会いを通して、食べる事、生きる事を学んでいきます。

食べ物を作る方達の努力と、家畜の大切さを知ることができる作品なので、是非、皆様も読んでみて下さい!照れ

 

★クリーンアースレンジャーは、最終話まで続きます。最後まで、お付き合い頂ければ幸いです。ウインク


↓申し訳ありませんが、最終話はこちらでご覧ください。(コンテストに出している為。)




 

また、1話の内容だけ動画にしました!
よければ、ご視聴下さい!

どうぞ宜しくお願いします!おねがい