★4話★収集デキマセーーン!

 

 

ブルーは張り倒すように、ゴミ袋にシールを貼り付けました。

 

ティッティリーーン!

 

クリーンアースレンジャーになくてはならない必殺技が決まったのです!

 

なんと!

この攻撃を受けたゴミは収集できませーーん!

クリーンアースレンジャーの会心の一撃!


でも、これだけではありませんよ!

「プレス板、発動!ポチッとな!」

 

トラックに付いたボタンを押すとプレス板が動いて、クリーントラックの必殺技が炸裂します!

 

「必殺!クリーンクラッシャー!」

 

トラックの大きな声を聞いて、ブルーとグリーンは集積所に置かれたゴミ袋を持ち上ます。

「サッサとゴミを片付けるぞ!」
「おう!」


ゴウン!ゴウン!

 

バケットの中に入ったゴミ袋は、強力なプレス板に押し潰されます。

 

「今日もクリーントラックは頼もしいぜ!」

「任せときな!!」

 

 

ブルーの言葉を聞いて、トラックは元気よく返事をしました。


「いつも、ありがとね!」

グリーンも声を掛けながら、沢山のゴミ袋を運びます。

「そいやーー!
あと1分で、全部トラックに入れるぞー!」


「うおらーーー!」

張り切る2人の横で、
ピンクはゴミ袋を持ち上げました。

「このゴミ袋は、安全かしら?
ねぇ、ゴミリン!」

 

 

「・・私は、自信を無くしたギョミ。」

小さな声で答えたゴミリンは、ゴミ袋に騙されて とてもショックを受けていました。

 

「ガスのスプレー缶が、燃やすゴミに入っていたなんて、恐ろしすぎるわよね。」

 

ピンクも、すっかりゴミ袋が怖くなってしまいました。

そんなピンクを、グリーンが気に掛けます。

「ピンクは まだ慣れていないから、少しずつゴミを集めてね。」

「はい・・。」

小さな声で返事をして ピンクが もう一つのゴミ袋をつかもうとした、その時・・。

 

グサッ!

 

「いったーー!」

 

指に、何かが突き刺さったのです。

 

 

ディロリロリーン!

 

ゴミモンスターが現れた!

 



「ケケケケケケ!突き刺してやるぜ!
俺は、串刺しモンスターじゃーー!」

 

「きゃーー!」

驚いたピンクは、尻持ちをつきました。

なんと、尖った竹串の棒が 何本も袋から突き出ていたのです。


「昨日は、家族で焼き鳥を食べたのさ~!
竹串の棒が、いっぱい突き出ちゃったぜー!ケケケ!」

 

 

串刺しモンスターは、嬉しそうに笑っています。


ブルーはピンクを守るように、モンスターの前に立ちました。

「ピンク!大丈夫か?
こいつは、できるだけ触らないようにするしかない!」


そう言ってブルーは、串刺しモンスターを 下から持ち上げました。

 

 

 

「いくぜ!必殺!!クリーンアタック!」

 

ギュイィィーーーン!

ブルーの怒りのエネルギーが腕に集中すると、串刺しモンスターはゴミの魔球となり、投げ飛ばされました!

 

 

 ズッゴーーーン!


串刺しモンスターは、バケットの中へ入ります。

ゴゴゴゴゴゴ!


「串の尖った部分には、カバーを掛けて捨てろってんだ!

ウイルスに感染するかもしれないだろうがっ!」

ブルーが叫ぶと、プレス板がモンスターに襲いかかります。

 

 

ゴウン!ゴウン!


「お前らは、ゴミ集めが仕事だろーがっ!
文句言うんじゃねぇ!」


潰されながら言い返したモンスターは、強い力に押されてトラックの中に入りました。

ティロリロリーン!
YOU WIN!

「よしっ!ここのゴミ収集は終わりだ!
次へ行くぞ!」


ブルーは声を上げて、グリーンと共にトラックに乗り込みます。

 


「ほら!早く!ピンクも乗って!」

「はい・・。」


気弱な返事をして、ピンクもトラックに乗り込みました。

ブルルルル・・。

 

トラックが走り出すと、ピンクは何も言えずに 考え込みます。

(クリーンアースレンジャーは、人の日常を支えている。だから、みんなが協力してくれるものだと思っていたのに・・。)

「はぁ・・。」


ピンクは、深いため息をつきました。

すると 運転をするブルーの指に、絆創膏が貼られている事に気付きました。

「ちょっと、ブルー!その指は、どうしたの?」

絆創膏には、赤い血が付いていたのです。

「あぁ、これ?
さっき、ゴミ袋に手を入れただろ。
そしたら割れたグラスも入っていてさ、破片がグローブを突き抜けて刺さったんだよ。」

 

ディロリロリーン!

ピンクは、マイナス53の心のダメージ!

「そんなぁ~!
どうして割れたグラスを、燃やすゴミに入れるのよ!
それは、燃えないゴミでしょ!
ゴミの分別表は、各家庭に配られているはずよ!」


ショックを隠せないピンクの横で、ブルーは顔色を変えずに運転をします。

「ゴミから聞こえる声は、いつも同じだよ。

分別が面倒臭いとか、税金を払っているんだから何でも持っていけとか、そんなもんさ。」

「そんな・・。
私達の事なんて、気にかけてもらえないのね。」


悲しみにくれるピンク。

そんなピンクに、グリーンは笑顔を向けます。

「日本人は、良い人だっているよ!」

 

グリーンの言葉に、ピンクは恥ずかしくなりました。

(よその国から来たグリーンに、こんな日本人の心を知られるなんて・・。)

横目でグリーンを見ると、彼の指にも傷跡が付いていました。

(外国から日本に来て働いてくれる人達まで傷つけてしまう。
働く人が足りない日本を、一緒に支えてくれているのに・・。)


ゴミは、捨てれば終わりではありません。
捨てた先に、ゴミを集める人がいるのです。
ピンクは、その事を気にかけてもらえない悲しみと、不安が襲いました。

(私は、クリーンアースレンジャーを続けていけるかしら・・。)

★つづく★

 

このお話は、ゴミ清掃員であり、お笑い芸人(マシンガンズ)の滝沢秀一さんの体験を取り入れています。

 

 

尖った串は、袋から飛び出ているとウイルスに感染する恐れがあります。
紙で包む、箱に入れる、ゴミ袋の中心に入れるといった捨て方をして欲しいと本に書かれています。(書籍、リアルでゆかいなゴミ事典より)

 

トイレットペーパーの芯を折ってカバーにするなど検討下さい。

 

スプレー缶がタオルで巻かれて燃やすゴミで捨てられていた事、それを見破った事も本に書かれています。

 

清掃員を一年も続けると、ゴミを持ち上げた時に缶の音に気付いたり、重みで違和感を感じるそうです。

 

他にも、ゴミ袋の結び目を見て、複数のゴミ袋を同じ人が出したとわかる清掃員がいるそうです。凄いですね!

 

でも、電池やライターは見破るのが難しいかもしれません。


私は、街のゴミ拾いに参加しているのですが、ライターは何度も拾います。


タバコの吸い殻は、断トツ トップでポイ捨てされるゴミです。

 

安価なライターは大切にされないし、マナーが悪い喫煙者が沢山いるんだなと感じます。

 

収集車の火災事故が起きた大津市のホームページには、このように書かれています。

 

ごみ収集車の火災事故は、誤ったごみの出し方が原因により発生しています。

 

ごみ収集車の火災は、ごみ収集員の命に関わる問題です。また、近隣の市民の皆様も危険にさらされます。

 

「分別するのがめんどうくさい」、「少しくらいなら大丈夫」が大きな火災事故につながります。今一度適正なごみ分別をお願いします。

 

間違った分別による事故は、他の地域でも起きています。


このような事故は、ニュースでも報道されますが、一時の事として流されてしまうと感じます。

 

ゴミモンスターと戦う物語にする事で、「清掃員は、常に命と隣り合わせで戦っている!」という事を伝えたくて描きました。


トラックだって、命がけで動いているのです。壊れたら買い替えれば良いという問題ではありません。


そして、清掃員の命は買い替える事はできません。

 

他にも、滝沢さんは このような事を体験しています。↓

 

 

 滝沢さんは、2人のお子様のお父さんなのですが、娘さんが「包丁が捨てられてて、危なかったね」と心配してくれた事に心が救われたそうです。


他人にとっては、ただの清掃員でも、誰かの大切な家族なのです。

滝沢さんには、この小説を書いた事を伝えています。


ゴミの問題を広めたいという事に感謝の言葉を頂き、続けて下さいと お返事を頂いたので、最終話まで公開します。

 

この作品は、全国のゴミ清掃員の役に立って欲しいという気持ちで作りました。

最終話まで、少しずつ更新します。
最後まで、お付き合い頂ければ幸いです。

 

また、物語の1話だけ 動画にしました!↓

よければ、視聴して頂ければ嬉しいです!

どうぞ宜しくお願いします!

 

 

次の話ができました。↓